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2009.08.04

『戦う司書と絶望の魔王』読了

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戦う司書と絶望の魔王』(山形石雄/スーパーダッシュ文庫)読了。

前巻にて覚醒し、世界を滅ぼそうと行動するすべての始まりの男。かつての英雄にして魔王、ルルタ・クーザンクーナ。人類が楽園より追放され、神によって滅びに瀕していた時代に、人類の希望として絶望に立ち向かった彼と、人類の物語が語られる。

神々しいまでに完璧な英雄、ルルタ・クーザンクーナの真実がついに明らかにされる過去編。さまざまな人物の視点から、英雄、ルルタ・クーザンクーナが描かれていく。ある者にとっては世界を守る英雄。ある者にとっては神そのもの。そして、ある者にとっては、ただ恐怖に震え、泣き濡れる子供にすぎなかった。

多くの人間がルルタに期待する。それは楽園から追放された人間たちの、ただ己が生き延びたいという浅ましき欲望。その欲望のすべてを背負わされ、ルルタ・クーザンクーナは戦い続ける。”英雄”と言う、人を超えたものを求められ、”英雄”として生き、”英雄”として死ぬことを願われて。

”英雄”とは人々の希望が、欲望が生み出すものである。”英雄”とは希望そのもの。つまるところそれは”人間ではない”。ただ、”そうであるべきもの”と言うだけに過ぎない。予言者(預言ではない)によってその役目を背負わされた、ただの人間であるということは、誰ひとりとして理解しようとしない。否、しなかった。

ここで一人の少女が登場する。ルルタと共に戦うことがすべての世界の中で、ただ一人、他者への愛を忘れない者。本当の意味での、楽園の最後の継承者。人々は知らない。彼女こそが真の希望であることを。己が忘れた楽園を生きるものである事を。彼女こそが、世界最後の神との架け橋であるということを。

他者への、ごく当たり前の愛を持った彼女は、ルルタを”英雄”としてはみなさなかった。ただの、哀しく孤独な少年としてしか接しなかった。”英雄”として、人間的なすべてを剥奪されていたルルタに、人を愛すること、世界を愛することを教えた。

言ってみれば、その時、初めてルルタは本当に意味で”世界を守る者”としての意思を手に入れたと言って良いのだろう。役目だから、使命だから戦うのではない。守りたいものがいるから戦うのだ。そんな当たり前のことを、ルルタに初めて教えてくれた存在だったのだ。

だが、人間は、それを理解しなかった。彼女は最後の希望であることを理解しなかった。唯一、神に愛された存在であることを考えもしなかった。それこそが、欲望に支配され、楽園を追放された証であることを理解しなかった人間そのものだった。

生まれるものは、絶望。ルルタは絶望した。人間に絶望した。世界に絶望した。その絶望が、世界を真の意味で殺すのだった。そして物語は現代に続く。絶望しかない世界で、真なる意味で幸福を求め、失われた希望を手にしようとあがくルルタに対して、しかして、世界は牙を剥く。彼の絶望を理解するものは、やはりいなかった。

そして、運命の輪は回り始める。ルルタを取り巻く絶望は、ハミュッツとチャコリーを生み出した。彼女らが、物語の最後の引き金を引き始める。

滅び行く世界。滅ぼす魔王として目覚めたルルタ。彼の前に立ちふさがるのは、武装図書でもなく、恋した相手のために、運命に抗った”彼”であった。本当の意味で、運命に抗った彼だけだった。

物語は終焉に向かっていく。ハミュッツの引いた引き金は、未だ止まってはいない。絶望に絶望を上塗りする、誤解と齟齬が撒き散らす終焉に向けて物語は加速する。

残されたものは絶望せるルルタと”恋する爆弾”。そして死したるハミュッツだ。彼らが絡み合う運命は、どのような結末を迎えるのか。残されるものは絶望か、あるいは希望か。すべての要素は絡み合い、混沌にして残酷なる物語は、最終局面へと向かっていく。

ルルタの絶望は救われるときが来るのか。ハミュッツの引いた引き金は、彼の絶望を完成させるのか、打ち砕くのか。それすらもわからぬまま、物語は最後の局面を迎えるのだ。自分はただ祈る。すべての人々に希望をもたらす終りが来ることを。しかし、それは本当に可能なのかどうか。それすらも疑義をはさまずにはいられないのだ。より幸福を求める心こそが、人間の業である。業こそがすべての元凶。業を描き続けたこの物語が、どのような境地にたどり着くのか、未だ見えない。業は克服されるのか否か。

だが、それでも。そう、願わずにはいられない。

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