« 買ったもの | トップページ | 買ったもの »

2009.08.17

『鷲見ヶ原うぐいすの論証』読了

51drasdcsl__ss500_

鷲見ヶ原うぐいすの論証』(久住四季/電撃文庫)読了。

冒頭のありえない超自然的としか思えない導入が、物語を経ることで、理解可能な(根幹となる理屈はどうあれ)領域に降りて来るというところに、京極夏彦的な要素を感じた。物語の三分の一ぐらいを費やして、”悪魔との契約は論理的にありうる”と言うことを説明しているあたり、とくに強く感じる。ここまで論理的に説明されれば、確かに”悪魔は存在する”ような気がしてくるぜ。まさに悪魔の証明を証明した感じだ。

その証明を行うに当たって、作者はかなり綿密に作品世界を構築している。なにかしらの特殊能力を持ち、物語的役割の記号性を明らかにしたキャラクター配置とか、かなり綿密な計算をしている感じがしてとてもスリリング。良い意味で”キャラに血肉が通っていない”感じの不毛さがいいんだ。ミステリを突き詰めていけば人間性の否定に行き着くのはむしろ当然とさえ言えるのだけど、電撃文庫でここまでやっちゃうのは、さすがだなあと思う。久住四季は本当に活躍する場を間違えているとしか思えん。

とは言え、さすがにキャラ小説的にもけっこう頑張っているようで、努力が跡が見受けられる。うぐいすのキャラクターなど、かなりラノベ的。クールだけど実は主人公にラブラブだったりするあたり、フックはきちんと作っている感じ。もちろん主人公は鈍感だから気がつかないんだけど。コテコテですね。例の直感素質はどこ行った。

まあそんなラノベ要素はきちんと盛り込みながら、やっぱり作品としてはすごく理性的で、乾いた感じがするのは作者の良い点であるように思う。あくまでもミステリとしては妥協しない。最初は絶対に不可能かつ不可解な現象のように見えて、ラストですべての要素が解体されていく展開には見事なカタルシスがあった。ただ、作者が過去作品に”魔法”が実在する物語を書いていたり、そもそも電撃文庫であることを考えると、この作品はラノベ的伝奇で落ち着くのかミステリに落ちるのか最後まで見極めることが出来ず、非常にスリリングな体験だった。これはレーベルによる錯誤だよなー。その意味では、このドライブ感を生み出すことが出来たのは電撃文庫だったがゆえのものだったのかもしれない。…であればやはり作者は電撃文庫で書くべくして書く作家だといえるのだろう。

それにしても『ミステリクロノ』の続編は一体どうなったんだろうな…。もちろん『トリックスターズ』の続編も…。やっぱり第一部完なんて体の良い打ち切りみたいなものだとしか思えないよ。ある意味それが一番のミステリだぜ。

|

« 買ったもの | トップページ | 買ったもの »

コメント

ああ、やっぱり読んでいたか!
あちしも今読んでいる~。

なんかうぐいす嬢は萌えね?萌ね?

投稿: はいとく! | 2009.08.25 21:31

かなりの萌え要素のかたまりですよね>うぐいす嬢(なんか別の意味みたいだ)。

投稿: 吉兆 | 2009.08.26 20:43

『ソードアート・オンライン』以来の新作挑戦。伝奇っぽい雰囲気でミステリ、は『死図眼のイタカ』でハズレくじを引いた記憶がまだ薄れていないんですが…買ってみました。

いやあ、較べるのも失礼なくらいよく出来てました。例によって作者は知らないんですが既に成功してる人なのかな。

内容については枝葉の部分で一つだけ気になることが。小説(一般含む)で二重人格を扱う時ってほとんどが女性で原因がレイプってのがテンプレと化してるのはこれでいいのか?医学知識なんてないから現実はどうなのか分からないけど。

推理小説で二重人格=女性=レイプ=犯人ってのが一つのパターンとしてできあがってしまってるので、ネタバレする前に真相が読めちゃったのは残念っす。物語に騙されたいタイプなので。

うぐいすさんはかわいいですねー。クールで理性的なヒロインは珍しくないけど、一巻から主人公にデレデレですか。たまらん。

あーでも売れないと二巻は出ないのか。とりあえずハガキは出そう。

投稿: 暗黒 | 2009.08.29 12:29

二重人格の原因は過去の虐待、と言うのはある種のテンプレ化している感じもありますね。『24人のビリーミリガン』からの伝統と言うか、”そういうもの”だと捉えておくのが良いのではないでしょうか。

投稿: 吉兆 | 2009.08.29 22:54

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/45956660

この記事へのトラックバック一覧です: 『鷲見ヶ原うぐいすの論証』読了:

« 買ったもの | トップページ | 買ったもの »