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2009.08.27

『騎士は恋情の血を流す The Cavalier Bleeds For The Blood』読了

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騎士は恋情の血を流す The Cavalier Bleeds For The Blood』(上遠野浩平/富士見書房)読了。

最後まで読んで、なんだよ!全然しずるさんVS統和機構じゃねえじゃん!看板に偽りあり、だ!と思ったのだがまあいいか。深くは追求すまい。なにより冒頭から後半にかけて、”今回の犯人”であるところの葛城貴士についての話が実に魅力的ことを特筆すべきだろう。

タイトル通り、今回は”騎士”についての物語である。騎士の存在意義は唯一つ、姫君を守ること。騎士が本当に戦争をしていたことは過去になり、代わりに騎士を律するものとして生まれた騎士道。本来のあり方が形骸化し、”形骸が本物”として取り扱われることになったものである。それは嘘でありフィクションであるのだが、しかし、そのあり方が”本当”として扱われるようになったとき、騎士の役割は姫君を守ることこそが本当の役割となったのである。

この物語は、まさにそういう話だ。本来のあるべき姿から変質し、偽物のそれを本当だと思い込み、偽物の望みのために存在する。その、”本当”の願いも知らぬがままに。

葛城貴士は、常人には持てぬ特殊な能力、MPLSを持ちながら、自らの本当の願いも知らない愚か者だった。欺瞞であった。彼は確かに騎士であったろう。姫君を守り、戦った。だが、その戦いの本当の意味を、自らの望みをしらなかった。誤魔化している。己の心を誤魔化したまま、そしていつしか誤魔化したことが”本当”になってしまう。彼は自らを誤魔化したことこそが本当であると信じ、戦うのだが、彼はそんなことは”本当”はどうだっていいとしか思っていなかったのだ。そんなことより重要なことが、彼にはあったはずなのだった。

だが、彼はそれから目を背けた。踏み込んで考える事をしなかった。”オカリナ”との激しい駆け引きを続けながら、彼は”本当の望み”がなんなのか考えることさえしなかったのだ。

しずるさんはよーちゃんと出会い、断ずる。この”騎士”は卑怯者だと。一歩も前に進んでいない、進もうと言う意思さえ持てなかった愚かな者だと。彼女は事件を解決しない。ただ、その欺瞞を突きつけるのみなのだ。欺瞞に生きていた貴士は、欺瞞を暴かれてしまっては生きていくことなど出来なかった。”本当”から目をそむけ続けたツケが、彼に支払われる。

彼の本当の望みは、決して彼の手に残ることなく、はかなく散った。姫君を守り続けた騎士は、その本当の意味を知ることなく消えていった。守ることなど、”本当”は意味などないと言うのに。残された姫君は、もはや、騎士の力など必要としないだろう。勝ったり負けたりを繰り返しながら、その結果を抱えていくことだろう。”騎士”の生きた証は、もしかしたら、彼女の中でのみ、存在しえるのかもしれない、と思わせるラストは、救いなのか、あるいは残酷さなのか。

それすらも、定かではない。

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