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2009.08.21

『翼の帰る処(2) ―鏡の中の空―(上)』読了

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翼の帰る処(2) ―鏡の中の空―(上)』(妹尾ゆふ子/幻狼ファンタジアノベルス)読了。

あんまり意識してなかったけど、ヤエトと皇女って親子ほどに年齢が離れているんだよな…。おかげで、主従なのか擬似親子なのか恋愛なのかよくわからない人間関係描写が非常に気持ちよい感じ。本当にこの作者はキャラの関係性描写が楽しいなあ。ひたすら隠居を望む主人公ヤエトが、下手に真面目で有能なのものだから、どんどん責任を押し付けられていく展開がおかしいやら頼もしいやら。そのくせ、すぐに倒れる虚弱体質を抱えて、責務を果たしていくのは、極端に自己保身と言うものが欠けた、ひどく歪な人物像が見えるところも面白いところだと思う。30まで生きられないかもしれないと言う諦念が、この歪みを形作ったと言えば、これは非常に衛宮士郎的な歪みであることよなあ、と思うのだった。方向性は真逆だけど(極端に自己をないがしろにするのは同じでも、世界に対するスタンスが反対。まあこれは話が逸れるので掘り下げないけど)。

基本的に大河ロマン的な描き方をしているけど、基本視点がヤエトからブレないので、非常に端正な物語になっていると思う。隠居願望の強く庶民的ながら有能で病弱でしかし人を惹きつけるものを持つヤエトを初めとするキャラクターの骨格にも隙がなく、活き活きと物語を彩っている。登場人物たちが物語に操られる駒ではなく、本当に生きているような躍動感があるのだ。ヤエトに次々と降りかかる受難に対して、”ヤエトらしい”態度で立ち向かっていく姿は、単にキャラが立っていると言うだけではない、感動的なものがそこにはあるように思えるのだ。心ならずも出世してしまい、面倒くさいとぼやきつつ、しかし、(文字通り)骨身を削って皇女を支えていくヤエトは、決して活劇の主人公になるタイプではないが、魅力的(そして奇妙)な人物であるし、さまざまにうごめく陰謀に対しても果断に対処する姿には清涼感すら感じるのだった。

また、ファンタジーとして高い強度を誇っていた前作と比べても、今回の強度は劣るものではない。化鳥騎士団の存在を始め、失われつつあった神とのつながりが、再び強まりつつある世界の蠕動が、ヤエトと皇女の未来に大きな影を落としている。人間の物語を語りながら、その裏側では神話の時代が再現されつつあると言うことが語られつつあり、非常に興味深い。上巻ではまだそれは匂わされるだけに留まっているが、今後の展開次第ではどのように物語を重ね合わせていくのか、期待せずにはいられないのだった。

まあそんなことを考えながら、ヤエトと皇女のもどかしい感じのやりとりに萌え萌えするもよし、色々と妄想の余地があって単純に楽しい作品だと思います。基本的にヤエトがそういうことに無関心すぎるせいで、よけいにもどかしさが募るといいますか。もっともこの主従はそういう方向に行って欲しくないような気もするのでこれでいいのかもしれないが…。だが最後の皇女の姿は、鳥たちの”それ”に影響されているってことでいいんだよな!ヤエトからの通信があったときに、出られないとか言っていたことがあったけど、そのとき皇女さまは何をしていたんだろうね!?とニヤニヤしながら読んでいたのでした。フヘヘえろかわゆいのう(…なんかもう色々と台無しだな)。

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