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2009.07.13

『SHINO -シノ- 黒き魂の少女』読了

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SHINO -シノ- 黒き魂の少女』(上月雨音/角川ミステリー文庫)読了。

勝手にGOTHの劣化バージョンを想像していたため、最近まで手を出さないで来たのだが、評判がなかなか良いので読んでみた。読んでみて反省。やっぱり読まずに判断するのは良くないね。読む前に危惧していたのが、適当に心の闇とやらを描写したなんちゃってサスペンスだったりしないかなあ、と言うものだったのだが、思ったよりも、絶妙なところで理解可能な”異常”(変な表現だが他に思いつかない)を、印象的な文章で描いている作品であったのは安心した。

正直、まだ一巻の段階では、ミステリとしての精度はそれほど高いものではないのだが、この作品の真骨頂は、おそらく”正気”と”狂気”の曖昧さを、きちんと描いているところなのだと思うので気にならなかった。だれよりも容易く”境界”を乗り越えてしまうヒロインの志乃ちゃんの描写が非常に気を使われているところも好感触。読者に容易く感情移入を許さない、神秘性がうまく表現されている。正常と異常、正気と狂気、その境目を容易く飛び越えることが出来るヒロインが、だれよりも人間らしい、お人好しな主人公の存在によってこちら側につなぎとめられているという設定も、ちょっとした拍子で安っぽくなってしまうところを、絶妙なところでかけがえの無い、それでいて危うい絆として描いている。

なんと言うか、大枠の要素は非常にキャッチーなのだが、心理描写がすごく巧みと言うか、美しい。そう、美しいという表現がぴったりくるな。この世ならぬ、こちら側の人間が決して近づいてはならない、考えてはならない甘美なる毒。その描写が、本当に手を触れてはいけない、甘く、危険な果実として描写していると思うのだった。

まあ、もちろんクールな(本当はそれだけじゃないけど)小学五年生、志乃ちゃんに萌え萌えするも良し、”異常性”と言うものに対する官能的な描写に耽溺するも良し、なかなかに器の大きな作品であると思われるので、この作品を輩出した富士ミスは偉かったんだなあ、と改めて思うのだった。

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