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2009.07.22

『RPG W(・∀・)RLD(2) -ろーぷれ・わーるど-』読了

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RPG W(・∀・)RLD(2) -ろーぷれ・わーるど-』(吉村夜/富士見ファンタジア文庫)読了。

主人公の勇者っぷりが半端ないことになっている。ゲームとして最強レベルの能力を持った上で、心まで本当の勇者として、自分と仲間の命を背負い、決断していくユーゴはちょっと成長のスピードがすごすぎると思った。ほんの数日前まで、ただの高校生だったとはとても思えん。

吉村夜は、本当に教養的な作家だなあ、と思うのはまさにこの点で、ようするに、ユーゴに”持てるものの義務”をまっとうさせようとしているように思う。レベル78と言う、ゲーム世界においては神の如き英雄クラスの超人であることを、いわば棚ボタ的に得てしまったユーゴは、逆にその能力ゆえにもっとも困難な試練に立ち向かわなくてはならないのだ。それが英雄になってしまったの者の義務。あらゆる困難を引き受け、あらゆる痛みを受け止め、むしろ義務とする。ただの高校生であったユーゴは、それを引き受ける真の英雄にならなければいけない。

そういう”人間が人間をやめる”と言うこと、すなわち”人間をやめて英雄”になることを、まったき肯定をしてみせるのが吉村夜の作家性なのである。ある意味では、作者は全体のために個人が奉仕することを、まったく否定していないのである。この点に、嫌悪感を抱く読者も出ると思うのだが、その考え方が正しいとか間違っているとか言える話ではないはもちろんのことだ。

吉村夜の作品に出てくる主人公は、大抵は個人的葛藤を経て、全体の幸福を選択していくことになるケースがほとんどなのだが、このシリーズでは、物語をゲーム世界とすることによって、個人が全体を左右する力を持つ過程を省くことが出来ている。そのため、ユーゴの葛藤はすでに個人的葛藤を潜り抜け、全体の幸福を追求し始めている。その結果がどのような点にたどり着くのかについては、まだなんともいえないのだが、個人的葛藤を通過するスピードがわりあい速いので、もしかしたら新しい方向性を得ることが出来る…のかもしれない。無論、今までどおりの吉村夜作品の通り、全体幸福のために自己犠牲を選択していくことになるのかもしれないのだが。…なんとなく、それだけでは終わって欲しくない、と言う気持ちがあるので、なんとかならないものだろうが(しらねえよ)。

いや、別に今までの主人公たちの選択に不満があるわけじゃなくて、そういう道は確かに気高くはあるよなあ、とは思うのだが、そればかりではちょっと不満と言うか。個人的葛藤を優先しろと言っているわけではなく、その2択を超えた選択が見たいなあ、と思うのだった。まあそれを描くにはある程度の巻数が必要なので、どこまで行くのかは純粋に売り上げにかかってくるのだろう。”その先”を見られるように、なんとか売れてもらえないものかだろうか。こればかりはなんともならないところではある。

2009/7/23追記
ユーゴが英雄としての道を歩み始めているのに対して、同じように高レベルキャラクターでありながら、いまだに女にモテることしか考えていないショウの存在は、もしかしたら存外に重要かもしれない。英雄として自己犠牲を果たしていくユーゴに対し、そんなのやってられねえよ、とアンチテーゼを掲げるのがショウの役回りなのではないだろうか。そうなると、必然的にユーゴとの対立は今後深まっていくことになるはず。もし、物語が巻数を重ねることが出来るのであれば、作者的に新しい領域に踏み込むことになりそうで、非常に期待したい。

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