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2009.07.14

『レギ伯爵の末娘-よかったり悪かったりする魔女』読了

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レギ伯爵の末娘-よかったり悪かったりする魔女』(野梨原花南/コバルト文庫)読了。

野梨原花南はある意味、稀有な作家だな、と改めて思う。部分部分の描写は驚くほど少ないし、状況描写もほとんどないし、場面はくるくると演劇のように入れ替わるのだけど、たしかにそこには人間が描かれている。よかったり悪かったりする魔女、ポムグラニットと、レギ伯爵の末娘、マダーの出会いから友情を育むまでの描写がびっくりするぐらい少ないのに、そこから繰り広げられる怒涛の如き物語展開に、開いた口が塞がらないうちに納得させられてしまうのだ。

まさしく怒涛と言う他ない物語運びである。決してテンションが高い文章を書いているわけではないが、次から次に繰り出される新しい舞台に、え、ちょ、待っ、っとこちらの準備が整わないうちに繰り出される。その展開のスピーディーさ。これはちょっと類を見ない。

あるいは軽妙な物語を紡ぐ語り手なのだ、と言えるかもしれない。ぽんぽん繰り広げられる軽快な会話は素晴らしいと思う。どいつもこいつも口から生まれたんじゃないかと思わせられる会話のテンポの良さもまた、スピーディーかつ怒涛の場面展開につながっているのだろう。

だが、テンポの良さだけで強引に進められているから良くないのかと言われれば全然そんなことは無い。なんと言うか、その強引さがとにかく読んでて気持ちがいいのだ。一体、どこに連れて行かれちゃうの?と先行きがさっぱりわからないジェットコースターのような物語展開に、正直、読者である僕は置いてきぼりにされないように食いついていくしかない。それはまるでアドリブで構成された舞台をかぶりつきで観るような、先行きの不確定さを感じさせる。自分はとにかくそれにわくわくさせられてしまうのだ。

この作者の非凡さは、まさしくその点にあるのだと思うのだが、今のところはまだきちんと言語化出来ていない。感想を書いていない『マルタ・サギー』シリーズも含めて、この作者についてきちんと語ってみる機会を作りたいと思う。

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コメント

面白く読んでいただけてるようでほっとしました。
軽快で風通しのよい作風が魅力ですね。

投稿: hatikaduki | 2009.07.15 22:40

不思議な作家性ですね。とにかく会話を含めた雰囲気が心地良い作品なので、きちんと面白さを語ってみたいところです。良い意味で浮世離れした、と言うか、異世界を描く作家だと認識したのですが、まだまだ語りたい部分の多い作家でもあります。

投稿: 吉兆 | 2009.07.15 23:12

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