『ラノベ部(3)』読了
『ラノベ部(3)』(平坂読/MF文庫J)読了。
最後の最後までいつもどーりにラノベ部でまったりと過ごす日常が描かれているので、あとがきを読んで初めて最終巻だということを知ってひっくり返った。龍之介と文香を中心とした三角、四角関係など、まったく結論を出さないまま終わらせるとはずいぶんと度胸のあることよ。まあ確かに日常系4コマ(違う)としては、終りなき平凡な日常こそがもっとも尊く、代えがたいものであり、同時にドラマティックなものであるということを語っているので、物語としては十全に語られているとは言えるのだが。作品は終わるが、彼らの人生はまだまだ続くというわけだ。その結論がどうなるかはわからないが、龍之介と潤が語り合ったように、あるいは文香とリアが理解しあったように、彼らなりの”素晴らしき日常”を、精一杯の努力で続けていくことになるのだろう。わざわざ非日常などに憧れる必要はない。ただ当たり前に生きていく日常こそがなによりも変えがたいものなのだということを、この作品の登場人物たちはよくわかっている。彼らはこれからも、ごく平凡な日常を大切に生きて行ってくれるのだろう、と言うことが信じられる、美しい終わり方であったと思う。終わらない物語。それはときに人生とも呼ばれるものなのだ。その意味で、最後の最後まで徹底的に非日常的な事件を起こさず、普通の日常の中で起こる生活を、最後まで貫き通したこの作品の構成は見事であったと思うのだった。
そして、ラノベに関するさまざまな思弁的な言及を繰り返しているという点で、メタラノベ作品としても成立しているところなども含めて評価すべき作品であると思う。何故、”日常”を描いた物語は素晴らしいのか。恋愛ドラマのような物語を生きるということはどういうことか、など、さまざまな物語をメタ的に解釈し、議論し、実験を行っているのだ。平坂読らしい先鋭的な作品であると同時に、当たり前にギャグ小説として、あるいは友情を描いた小説としての側面を見ても十分に面白いというところが稀有であると感じる。実験的でありながら普遍性を維持するということは並大抵のものではない。そういったところに作者の確かな力量を感じさせられたのも嬉しい驚きだった。正直、平坂読はどこに行ってしまうのか不安なところもあったのだが、この作品を読めば、きちんとした土台が作者にあることがわかる。
作者の次回作にも期待していきたいと思う。
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