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2009.06.06

『恋文の技術』読了

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恋文の技術』(森見登美彦/ポプラ社)読了。

物語が主人公があちこちに送る手紙と言う体裁で進んでいく文通小説。語られるのが主人公の一方的な手紙のみなので、実際にいかなるやりとりがあるのか読者が想像するしかないところがいい。行間を読ませられる面白さと言うべきか。しかも手紙のやりとりの時系列に公開されているのではなく、文通相手ごとに記述されていくので、手紙の内容のそこかしこに潜まされた出来事が、手紙を読み進めていくごとにわかってくるところも気が利いている。格調高い文章で、相変わらずしょうもないことを主張する主人公はあいかわらずの森見主人公らしいのだが、彼の日常はその語り口から、近所でエロビデオを借りるだけでも笑ってしまうような滑稽味があって面白い。あくまでもここで書かれているのは手紙であって、彼の本心が書かれているわけでない、と言うことを念頭におくと、その奥ゆかしさと言うか韜晦ぶりにも笑えてしまうのである。まったく底が浅くて軽薄な人間と言うのは文章を書いても「君は本当にバカだな」としか言いようのない文章を書くよな、と思わせておいて最終章の繰り出されるアクロバットには驚かされたので底が浅いのは自分でしたすいません。ラストの展開はまさに作者らしさ溢れるファンタジーと洒脱が感じられる展開で、心が本当に温まる。世の中、不安で面白くないし退屈なことも多いけど、こういうことがあってもいいんじゃないかな。世界は美しい。たとえそれが嘘だとしても、この主人公は書簡の中でそれを語り続けるのだ。

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