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2009.06.26

『白夢 放課後の夢使い』読了

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白夢 放課後の夢使い』(瀬尾つかさ/富士見ファンタジア文庫)読了。

瀬尾つかさは僕が愛好する作家の一人だ。いささかプロットの作りこみが過剰で、あまりライトノベル向きではないのがラノベ作家としては難点の一つではあるが、そこさえも僕の好きなところなのだから仕方がない。さて、その瀬尾つかさの新作と言うことで楽しみにしていたのだが、実際に発売され、手に取ってみたときになんとも言えない匂いを感じたのであった。そう…テコ入れである。ライトノベルらしからぬ作風を得意とする作家だけに、ライトノベル読者に受け入れられにくいと編集部は考えたのだろうか。今作には、ラノベ的なキャラ作りにフォーマットな学園異能っぽい匂いがぷんぷんである。ああ、瀬尾つかさも魔改造の一歩を踏み出してしまったのか…うなだれる僕。でもくじけてはいけない。これでファンが増えれば願ったり叶ったりと言うものだ。

で、内容について。やっぱりライトノベルでした!以上!で済ませたいところなのだが一応コメントしておくか。4年前以上の記憶の無い主人公が、人里離れたとある学園にやってくることから物語は始まる。そこで出会った、親戚の奇矯な少女と出会い、波乱の学園生活が幕を開けると思いきや、突然立ち込める深い霧とそれにまぎれる正体不明の化物。主人公は否応なしにそれらとの戦いに巻き込まれることになる…というわけで本当にコテコテよね。なんでわざわざこういう作品を瀬尾つかさに書かせるかなあ…と富士見ファンタジア文庫には不信感を抱いちまうぜ。早く作者は富士見を離れて、早川文庫にでも移籍したほうが良い。たぶん。まあそんな感想しか出てこないのだが、所々に作者らしい部分もあって、実はけっこう面白かったのであった。まず、主人公がいい。僕の個人的趣味の話で恐縮だが、僕は”何かが欠けている”人物に強く惹かれるところがある。ちょっと変わった、普通ではない人物。本来あるべき情動をどこか欠落していたり、自分に仮面をかぶっていたり。そういった、さまざまな意味で”傷”のある人物が好きなのだ。そしてこの主人公、一見、ラノベ的優柔不断なキャラクターに見えるのだが、実際にはそれらはすべて仮面なのだ。平凡で、家庭的、穏やかで自己主張をしない。そんな主人公なのだが、それらはすべて仮面だ。しかし、だからと言って、実は凶暴なのかといえばそんなことは無い。普通に、ただ、そういうキャラクターを作っておいた方が、人間関係上、楽であるからという理由で、仮面をかぶっている。実際には、もっと利己的だし、計算高い顔が隠れている。けれど(ここが重要なのだが)それを露悪的に振舞わず、当たり前のことだと認識しているところがすごく良かった。仮面をかぶることに、別段罪悪感を感じているわけではないし、悪意もない。ただ、そうやって生きることを選んだだけに過ぎない。そういうどこか虚無的でありながら前向きな感じが出ていてすごく良かった。また、その選んだ理由と言うところに主人公の行動の動機が隠されていたりするのだが、そこから主人公の選択と決断につながっていくところなどは、瀬尾つかさ、マジうめーな、と感心することしきりである。キャラクターの心の変遷にまるでブレがなく、明確だ。特に何の理由もなしに正義感を振りかざすどこかの主人公とはえらい違いである(もっともどちらが良いという問題でもないが)。他にもヒロインを始めとしていろいろなキャラクターが出てくるのだが、押しなべて印象的で、その行動の動機付けをきちんとやっているところなど、作者の見事な手腕を感じさせる。やっぱりこの人は基本的にキャラクタードラマがすごく上手い人なんだな、と改めて思うのだった。

作品としてはまだ序章が始まったばかり。作者にしてはスロースターターな感じだが、まあたまにはこういうのもいいのだろう。きちんと物語に決着を付けてくれることを疑ってはいない。次巻も期待しています。

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コメント

瀬尾つかさのクジラのソラはイラストレーター買いだったんですが、大当たり作品でした。話のスケールがあんだけ大きくなってるのに四巻で纏めてるのは作者の手腕でしょうか。
これも買ってみることにします

投稿: meganegane | 2009.06.27 22:54

作者の手腕もあるのでしょうか、正直、話を詰め込みすぎだったような気も…。4巻と言うこともあり、打ち切りだったのかもしれません…。まあ話のインフレ具合がすごかったので、一概に悪いとも言えませんけれど。

『クジラのソラ』に比べるとずいぶんとっつきやすくなっているので、その意味でもおススメです。逆に”瀬尾つかさ”を読みたいんだ!と言う向きには不足が残るかも…。いや、2巻以降の展開次第では、まだまだすごいことになりそうな予感はするので、期待しています。

投稿: 吉兆 | 2009.06.28 11:16

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