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2009.05.09

『RPG W(・∀・)RLD(1) -ろーぷれ・わーるど-』読了

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RPG W(・∀・)RLD(1) -ろーぷれ・わーるど-』(吉村夜/富士見ファンタジア文庫)読了。

吉村夜の新作はオブビリオン的なRPG世界に入り込んでしまった高校生たちの冒険物語。かなり深刻な事態なのにむしろ事態を楽しんでしまっている主人公たちの反応は、吉村夜らしいユーモラスさがあって安心する。どこまでも明るく前向きな精神が基本にあるのだ。それは物語のダイナミズムを、ある一面では妨げる部分もあって必ずしも長所ばかりとはいえないのだが、物語に暗い影を落とさない作者のこだわりのようなものを感じるので自分はそれほど嫌いではない。脱線してしまうが、とにかくこの作者の描く物語は、どんなにつらく苦しい物語であっても、根底には人を信じる気持ち、明るい未来を描く心を肯定しており、世界には光に満ちているのだと言う主張があると思うのだ。

話を戻す。RPG世界にやってきた高校生たちは、かなりのやり込みゲーマーであったため、それまでプレイしていたキャラクターのステータスをそのまま引き継いでいるため、世界観的には圧倒的な戦闘力を有している。しかし、彼らのメンタリティはゲーム好きな高校生以外なにものでもないため、ゲームの世界と言っても痛みも、そしてなによりも死が存在する世界では、ゲームのようには勇敢ではいられない。HPが削られれば痛いということを知っていて、Oになれば死ぬのだと言うことを受け入れられるとは限らない。

その恐怖に立ち向かうことが、この作品におけるメインテーマになっているようだ。手段があり、力もある。その上で動かない理由をさがすのではなく一歩を踏み出す。本当の強さとは力が強いことでも魔法が使えることでもなく、行うべきことから逃げないことなのだ…と言うことを語っているように思える。

正直、僕の価値観からするとその考え方は楽天的に過ぎるとは思う。実際には手段も力もなく追い込まれるのが世の常だ。選択肢がある場合はマシな方で、大抵の場合は選択肢すら選べない。けれど、そんなことは作者もわかっていると思う。本当につらい時と言うのは、本当にどうにもならない時がある。それでも、逃げずに立ち向かうと言う行為は、確かに価値があると言うことを伝えたいのだろう。

その意味では、吉村夜と言う作家は非常に啓蒙的な作家であり、読み手に希望を与えたいという作者の想いが感じられるので、決して否定する気にはなれないのだ。これは、10代の人に読んでもらうべき作品なのかもしれない、と思うのだった。

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