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2009.05.27

訃報

栗本薫が死去、と知った瞬間の気持ちは筆舌に尽くしがたい。

正直なところ、ぼくは栗本薫の熱心な読者とはいえない。十代の一時期に著作を読み漁ったことはあるが、自分の中ではそれほど重要な作家と言うわけではなかった。とくに、ここ数年の栗本薫に対しては、作品の品質に疑問を覚えざるをえなかったので、すっかり読まなくなってしまった。血気盛んな時期には、はっきりとした反感と言うか拒絶感めいたものを持っていたことさえあった。

それでも、いつかはグインサーガは終わるのだろうし、さまざまな謎が明らかにされるだろうという信頼がどこかにはあったように思える。今でこそ読んではいなかったが、数年前までは、グインサーガの熱心な読者だったのだ。読まなくなった今でも、まあ、完結したら、読んでみてもいいか、と思ってさえいたのだ。

だが、もはやグインサーガは完結しないのだ。永遠に完結することはないのだ。そんな想いが、心を苛んでやまない。理不尽さ、苛立ち、怒り。どこに向かうともしれないそんな感情が、そこにはある。

そこで初めて、自分は栗本薫と言う作家は、これほどに重要な位置を占めていた作家だったのだということに気くのだ。物事と言うのは、ときに失われたときにその重要性に気がつくというが、まさにそれ。グインサーガの完結とは、ぼくの中では、一つの信仰のようなものだったのだ。

なぜ死んだのだ。あんまりにも無責任じゃないか。そんな風に作者に文句を言いたくなる。

これで終わりだって言うのか。認められない。認めたくない。憎しみにも似た感情を、作者に覚える。

死者に対して、生者は無力だ。どんな嘆きも怒りも死者には届かない。ぼくはただ、失われたものを思い、生まれなかったものを思い、無念さを感じ続けるしかないのだ。

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コメント

グインサーガは80巻前後でギブアップしました。それ以外の著作は読んだことはありませんし、作家個人についてもあまり知りません。それなのに割とショックを受けてます。ただ、怒りというよりはどこか呆然とした感じですが。

まさか、かつて自分が読んでいた本が「未完の大作」になるとは思わなかった…。

投稿: 暗黒 | 2009.05.28 12:42

なんと言うか、ショックを受けてしまっている自分がショックです。グインサーガとは、そこまで自分の中に根を下ろしていた作品なんだ…と言う、ちょっと呆然としてしまっている感覚です。

投稿: 吉兆 | 2009.05.28 23:45

ここ数年、有名な作家が何人も死んでいます。一人の読書家として、ご冥福をお祈りします。

海外小説の「時の車輪」は他の作家が引き継ぎました。もしかしたらグイン・サーガも、他の作家が引き継ぐかもしれません。

投稿: がれ | 2009.05.31 22:48

どうなんでしょう?せめて終幕への道筋を作者が残していればなんとかなるのかもしれないですが、この作者はそんな風にプロットを書くタイプではないらしいので…。誰が書いても納得がいかないものになりそうなので、誰かが書き継ぐということは考え難いですね。なにしろ、書き手は、それまでの百数十巻を背負わなくてはならないわけですから…。

投稿: 吉兆 | 2009.05.31 23:51

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「なんて素敵にジャパネスク」原作者に続いて「グイン・サーガ」原作者までもが逝ってしまうのか。。 [続きを読む]

受信: 2009.05.30 01:23

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