« 『森口織人の陰陽道 巻ノに』読了 | トップページ | 買ったもの »

2009.05.13

『ラプンツェルの翼Ⅱ』読了

51eojyvxidl

ラプンツェルの翼Ⅱ』(土橋健二郎/電撃文庫)読了。

まさか続きが出るとは思わなかった…。前巻で完璧に完結しているものと…。冒頭の始まり方からは、なんとなく土橋、初心に戻ったな、と言う感じの不条理ゲームから始まるところからしてわくわくでした。人間性を削り取るような不条理極まりないゲームを始めるとこの作者は面白いよね…って毎回そんなゲームばかりやっているような気もするが。まあ前巻はちょっと違うイメージがあったからなあ。美少女バトルロイヤルものとしての側面が強いように思っていたので(ラストは除く。ラストの救いようのなさはさすがだった)、このゲーム中心の話になっているのははっきり言って楽しい。試験を潜り抜けたのも束の間、新たな試練にさらされる奈々。彼女の立ち向かう試練は、プレイヤー同士の疑心と対立を促す冷酷なものだった。それに対して消えてしまった奈々を待ち続ける遼一の、不安な日常と、彼と一緒に語り合うジェシカの物語が挿入される。次から次に待ち受けるゲームの残酷なるルールに徐々に人間性をすり減らしていく奈々と、彼女を信じ続ける遼一の間に待ち受ける最後の試練とは。どこまでも残酷な世界を前に、二人で立ち向かっていく展開は、どこか奇跡的なものを感じる。土橋健二郎の紡ぐ物語には、徹底して利害の計算が渦巻いており、そこには善意なるものの入り込む余地はまったく無いのだが、最後の最後でそれを覆すものは、人間の想いの可能性であると言うところがまさに土橋健二郎の真骨頂と言えるだろう。前半部のゲームの凄惨さと、ゆるやかな遼一の日常の対比があまりにも残酷で、二つの流れが最後に合流し、一つの決断につながっている展開は、なるほど、と膝を打った。この作者は意外と(と言うのも失礼だが)物語を紡ぐのに上手さを感じるのだが、このようにテーマ的な部分がきちんと物語に結びついているところなどに、とりわけ強く感じる。ジェシカの決断も含めて、残酷な世界のわずかな希望のようなものを描くことが非常にセンチメンタルで、この作者は本当は相当にロマンチストだよなあ、とデビュー作からの思いを新たにしたのだった。

|

« 『森口織人の陰陽道 巻ノに』読了 | トップページ | 買ったもの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/45004331

この記事へのトラックバック一覧です: 『ラプンツェルの翼Ⅱ』読了:

« 『森口織人の陰陽道 巻ノに』読了 | トップページ | 買ったもの »