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2009.05.31

『パラケルススの娘(8)クリスマス・キャロル』読了

51d2kzfojnlパラケルススの娘(8)クリスマス・キャロル』(五代ゆう/MF文庫J)読了。

おー素晴らしい。久方ぶりの『パラケルススの娘』は(本当に久しぶりだ…。作者はいろいろ書いていたようなので、単純に遅筆というわけではないようだが…)、久しぶりに物語世界に吸い込まれてしまうという稀有の体験を得られる素敵な作品になっている。もう、本当に読んでいると、意識が本当にどこか行ってしまって、ふと我に返ったときにはけっこうな時間が経っていたりする。素晴らしいですね。まさに幻想の紡ぎ手。序幕からしてその描写力は遺憾なく発揮され、ゾッとするほどの”物語”を感じさせられた。まさにむさぼるように読みふけり、自分はこんなに五代ゆうの作品を求めていたのか、と自分でも驚いてしまった。

それにしても、遼太郎くんは、もうキャラクターとしては完成されてしまったなー。守るべきものは守る、という一点にはもはやなんのブレもなくなっている。これはハーレムを構築しても仕方が無い。それぐらいのナイスガイ。5巻で登場したシャルロット(なんかすごく久しぶり)もハーレム追加されたけど、ぜんぜん不快感ないもんなー。むしろシャルロットに語りかける言葉は、ロンドンにやってくることで得られた”家族”に対する大切な気持ちが切々の語られており、いやなんとも圧倒させられた。なんか言霊が降りている感じだ。

過去のクリスティーナとレギーネにまつわる物語は、以前にある程度伏線と言うか情報が振られていたので、予想通りと言えなくも無かった。そういえば、確かダヴィンチコードが出たとき作者が悔しがっていたような記憶があったのだけど、そうか、そういうことだったのか、とこの巻を読んで納得した。最初から考えていたとしたら妖怪ネタカブリもいいところだものな。二番煎じになってしまったので驚きとかはなかったね…。たぶん意識して劇的には描かなかったのだけど…。それにしても、テオフィルとクリスティーナの物語は短いながらも、その燃え上がるような愛の物語はまさに五代ゆうの真骨頂。読んでいるうちに、一瞬で物語に吸い込まれるような引力を感じる。愛を知らぬ男、テオフィルが、虐げられることしか知らずとも、決して絶望をしないクリスティーナに心を動かされていく心理にはものすごく深い印象を与えられた。圧倒される。

ラストのまさかの展開は、果たして作者はどこまで手綱を握ってやっているのか…?本当に裏切ったようにも見えるし、実は他の思惑があるようにも思える。最後は遼太郎とクリスティーナの間での意思のぶつかり合いになるのかなー。どう考えても揺れ動いているのはクリスティーナなわけで、遼太郎が完成された分、彼女の葛藤が今後のメインに入ってくることになるのだろう。その意味で、ようやく”クリスティーナの物語”が始まると言えるのだ。このまま行けば、これまでの五代ゆう作品に劣らぬ傑作となりそうな予感をひしひしと感じる。クライマックスを迎えるであろう次巻以降が待ち通しい。…また刊行が一年後とかにならなければいいのだが…。

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