『ROOM NO.1301(11) 彼女はファンタスティック!』読了
『ROOM NO.1301(11) 彼女はファンタスティック!』(新井輝/富士見ミステリー文庫)読了。
ROOM NO.1301シリーズ完結編。ひどく長い物語だったような、あっという間だったような、不思議な感覚だ。正直なところ、あまりの急転直下に、気持ちが追いついてこない感じ。冴子が逝ってしまうことは、すでに物語のあちこちでそれとなく匂わされていたものの、冴子自身の物語を紡ぐこともなく、ひっそりと消えてしまうなんて、そりゃあないだろ。あんまりじゃねえか。結局、彼女は、健一のもっとも傍にあり続け、彼の葛藤を見守り、人々の出会いをいとおしみながら、彼女自身は何も受け取らずに行ってしまった…。これは本当に残酷すぎる。彼女にしてみれば、現在生きていることそのものは余生と言うか、人生の偶然に過ぎないところだったのだろうが、誰も彼女を救うことが出来なかったという事実は、すべての物語を打ちのめす。そう、彼女は何一つ救われず、何一つ望まず、死んでしまった。彼女の本当に求めるものは得られず、それ以外のことも得られず、死んでしまった。彼女自身が納得していたことがせめてもの救いかもしれないが、それは残酷さをより際立たせるだけ。ひどい話ですよ、本当に。
この巻自体は、一冊まるごとエピローグのような物語になっている。有馬冴子が死んでしまうことと、それによって広がる人々への波紋。打ちのめされた健一が、自分の殻を打ち破るまでの物語。結局、健一は、一人で悩みに沈み込み、他者と共感することの出来ない人間だったわけだけど、そんな自分であることに、今回の冴子の死により、徹底的に突きつけられた。そんな彼が、刻也や綾の思いやりを通して、なにより千夜子の言葉によって、自分が”そうである”という事実を受け入れる展開になっている。
個人的には、やや健一を追い詰める過程が急ぎすぎていると言うか、いろいろとキャラクターの直接テーマを語らせすぎている気がした。とくに冴子の物語はもっと描かれる必要があると思うし、健一を追い詰める展開は、それだけで一冊分くらいの分量があっても良いと感じる。そのあたりの拙速さは勿体無いと感じるところも多いが(もしかしたらレーベルの事情なのかもしれないのだが、もし、作者の意図以外のところでこの展開を強制されているとしたら至極残念と言わざるを得ない)、それでも健一の成長に焦点をおいてまとまっている手腕は評価したい。結局、健一はなにかが変われたと言うわけではない。恋愛に向いていない、という彼の気質はそのままだ。しかし、そんな自分を嫌悪するのではなく受け入れていくというところに落とし込んだのは納得できる。人間なんてそんな簡単に変われるものではなく、受け入れて、生きていくことしか出来ないのだ、と言うことか。
まあラストの後日談にはひっくり返ったが。健一よ…お前は本当になんにも変わってねえな。まあ、きちんと責任を取るのなら、僕が言うことは何もありませんがね。
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