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2009.04.23

『翼の帰る処(上)(下)』読了

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翼の帰る処(上)(下)』(妹尾ゆふ子/幻狼ファンタジアノベルス)読了。

ものすごくに面白かった。まさに純正のファンタジーと呼ぶにふさわしい。実を言うとこの作者はあまり読んだことがなかったのだが、久しぶりにファンタジーらしいファンタジーを読んだ実感があって大変満足しました。なんと言うか、世界観の奥行きを感じさせてくてるファンタジーと言うのは貴重だな、と。神は細部に宿るとは言われるけれども、幻想も細部に宿るんですよね。北嶺と呼ばれる厳しい大地に生きる人々と、過去に交わされた神との契約と背景に、異世界に生きる人々の、彼らが生きる歴史を描いており、実にファンタジーとして格調高い。神の存在はすでに遠くになっているけれども、忘れ去られるほどには時を経ていないと言う世界観もわくわくさせられる。この世界の人々にとって、神の存在は”契約”と言う形で確かに残っている。ただし、それはすでに遺産とでも言うべきもので、神そのものを見る事が出来なくなってからずいぶんと経ってしまった世界。作者の語りの端々に、幻想と悠久の時の流れを感じさせられるに至っては、もはや興奮極まれり。

キャラクター小説としても大変優れていて、隠居を望む主人公、ヤエトを始めとして、活発な皇女、色男な騎士団長などの描写が生き生きと、ときにユーモラスに、ときに気高く描かれているところも素晴らしかった。ヤエトと皇女の交流は、どこか緊張感を孕みながらも少しずつお互いを信頼しあう過程がきめ細かに描かれており、すごい勢いで感情移入してしまった。ヤエトは、皇女のためにさまざまな謀略に挑んでいくのだが、生来虚弱な上に、コントロールの出来ない異能、過去見の力の副作用でしょっちゅう死に掛けるところなど、思わずハラハラさせられてしまう。この主人公、なにかあればすぐにでも死んでしまいそうなくせに、なぜか厄介事に巻き込まれてしまう苦労性であるため、読者としてもおっかない。そんなヤエトを守る皇妹の騎士団長ジェイサルド(過去は悪鬼のごとき盗賊で、今はかっこいいおじいちゃん)とともに強行軍を行っていくシーンなどは、もう読者としては完全に物語に引き込まれてしまった。

ここまで異世界に没入してしまったのは、本当に久しぶりなことで、良い読書をしたなあ、と思う。続編はありそうなので、これまた非常に楽しみにしている。この作者の本、しばらく集めてみようかなあ。

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コメント

こんにちは、はじめまして。いつも拝読させていただいています。
妹尾ゆふ子さんの作品のおすすめをさせてください。
キャラクター小説としては、「翼の~」が今までの作品の中では最高の作品だったと思いますので、そちらの系統としては「NAGA」(ハルキ文庫)が次点かと思います。こちらは現代日本が舞台で神様が出てきます。
ファンタジー小説としては、「真世の王」(スクウェア・エニックス)「チェンジリング」 (ハルキ文庫)がおすすめです。前者は異世界もの、後者は現代のOLがケルト風異世界にいってしまう話になっています。どちらもシリアスめです。
おすすめ、なのですが、いずれもほぼ絶版かもしれません。coldsweats01

投稿: おむらよしえ | 2009.04.24 10:06

おむらよしえさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

おすすめいただきありがとうございます。とりあえず『NAGA』あたりから読んでみようと思います…って、

>おすすめ、なのですが、いずれもほぼ絶版かもしれません

ぜんぜん駄目じゃないですか!まあ、探して見つかったものから読むと言うことで…。

投稿: 吉兆 | 2009.04.24 23:16

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