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2009.04.25

『アマノン国往還記』読了

アマノン国往還記』(倉橋由美子/新潮文庫)読了。

知り合いに借りた本を積みっぱなしにしてしまった。ので、気合を入れてとっとと読んだ。

簡単に言えば、ガリバー旅行記のような異世界紀行譚と言えるのだが、実は読者として来訪する異世界が、実は見慣れた世界だったという着想だろうか。見慣れたものも、異邦人の視点から見ると異様な世界観になってしまう、と言うことか。

モノカミ国の宣教師、Pは、アマノン国と呼ばれる異邦に、モノカミ教を伝道するために向かうのだが、このアマノン国というのが、おそらくこの作品が描かれた1980年代の世相がそのまま反映された日本の戯画であると言うところが面白いところ。そこで描かれる世界は、現代の視点から見れば時代遅れと言えるかもしれないが、Pという人物を通して描かれているため、結果的に風化を免れているとも思える。我々はPの視点から、なんともおかしなアマノン国の文化、風土を楽しむことが出来るわけだ。それは確かにどこかで見たことのある風景なのだが、しかし、明らかに決定的に違うようにも思える。なんとも不思議なおはなしだ。まあぶっちゃけ主人公のPが女しか住んでいない(厳密には違うのだが)アマノン国にやってきて、存分にセックスを堪能するパラダイスが延々のつづられているだけの話なのだが、恐るべきリーダビリティを誇る読みやすい文章に引きずられて、Pの辿るとぼけた紀行を楽しめてしまう。この主人公はいっそ見上げたものと言うべき利己主義者で、とりあえず美少女がいればセックスしたいと思うような男なのだが(つうかこいつは超人か。無射精で6人とか化物か)、まああっけらかんとしているので、作品全体の空気がすごく軽薄だ。これは当時の社会を風刺しているかもしれないが、登場人物たちは自分の欲望にストレートなので、これはこれで悪くないような気がしてくる。俗と欲に塗れたブッタ教(まあ仏教なのだが)の様子なんて、超たのしそーだ。悟りも解脱も金次第じゃぜー。さらに社会的ステータスのある人物は、すべてセクレ(たぶんセックスレディとかの略なんだろう)と呼ばれる美少女(10代前半)をはべらせているとか、どこの官能小説ですか。Pのやることがどんどんエスカレートしていくつれ、モノパラなるセックス番組を公共の放送に載せるとか言う展開になっては気が狂っているとしか思えない。いや素晴らしい。正直、ちょっと感心したぐらいだ。こんなエロゲーみたいな設定を20年前にすでに描いていた人がいたとは。まあとにかく倫理観がいろいろな意味で崩壊している世界を、グロテスクにあっけらかんと描いているので、Pが出くわす(どこか見慣れた)世界を新鮮な驚きをもって受け止めれば良いのだろう。

ところで、エピローグを読んだ時、最初は意味がさっぱり分からなかった。繰り返し読んで、ようやく意味を悟る。あー…今までの物語そのものがセックスの比喩だったのねー…。なんと言うか、アホな話じゃったわ(褒め言葉)。

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