« 買ったもの | トップページ | 買ったもの »

2009.03.12

『プリンセス・ビター・マイ・スウィート』読了

51wi9og2bocl

プリンセス・ビター・マイ・スウィート』(森田季節/MF文庫J)読了。

この物語はなんと形容すべきなんだろうな。恋愛小説?まあそれしかないかー。より正確には、一人の少女の恋と失恋、そしてまた恋をすることを描いた物語であると言える。ただし、恋をする少女、チャチャの視点で描かれるようになるのは物語の終盤になったころ。それまでは、チャチャの周囲にいる男性たち(腐れ縁のクラスメイト、義理の弟、兄ような人)の視点で物語は語られている。ここが非常に面白いところだと思った。本来描くべきチャチャの輪郭を外側から形にしていくように感じられるのだ。彼らは全員、(彼らなりに)チャチャを愛し、大切に思っており、向ける視線は暖かい。けれども、彼らの目に映るチャチャの姿はそれぞれに微妙に異なる。あるときは奔放でわがまま、あるときは横暴で傲慢、あるときは素直で心優しい。それぞれの人物の目の前には、それぞれ異なる彼女がいるのである。それゆえに、彼女が物語の語り手となったとき、彼女の心情が明らかになったときの美しさが映えるように思うのである。

前回がイケニエビトの物語であったのに対し、今回はタマシイビトの物語。前回が奪われる側の物語であったのに対し、今回は奪う側の物語。ただ奪われるだけの存在は哀しいことだが、しかし、奪う側が奪われる側よりも幸福であるとは限らない。これは捕食者としての自分と、ただの人間である自分の間に葛藤し、だれかの傍にいることをただ望む彼女の物語と言うことも出来るだろう。奪うことに傷つき悲しむ、彼女の心は美しい。単純な二項対立に囚われない、作者の優しい視点に心を打たれた。

さて、奪われる側と奪う側の存在を描いた作者は、次はどのような物語を描くのだろうか。これ以上にどんなことを物語ることが出来るのか、非常に興味深く思う。次回作にも期待したいところだ。

|

« 買ったもの | トップページ | 買ったもの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/44321155

この記事へのトラックバック一覧です: 『プリンセス・ビター・マイ・スウィート』読了:

« 買ったもの | トップページ | 買ったもの »