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2009.03.29

『HURTLESS/HURTFUL』読了

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HURTLESS/HURTFUL』(清水マリコ/MF文庫J)読了。

すごく面白かった。どれくらい面白かったかと言うと、読み終えた後に改めて冒頭を読み直してしまうくらいに面白かった。ところが清水マリコは、僕にって言葉にしにくい作品を書くなあ、という気持ちを新たなものとなってしまった。いやーなんかこの人の作品って説明しようとすればするほどに本質を外していく気がするのよね。考えるな、感じるんだ!の世界。でも、ついつい読者(まあ全員じゃあないだろうが)としてはそれでも”読み取ろう”としてしまうので、ますます混乱してしまうのだった。うん…なんだろうね…すごく面白かったのだけど、結局、どんな話だったのかよく理解出来ていないんですよ…。正直、この作者の本の中でも今までで一番わからなかった。理解力がないなあ…。それでも書いちゃうんだから、まったく読書感想なんて恥の生産装置だとつくづく思う。こんなの書いて喜んでいるなんて救いがたいな!

などと予防線を張っておいて書くのだが、おそらくこの作品は、男性の中にある少女性の話なのかもしれない、とは思う。もっともこれも本筋じゃあなく、より広い意味で、だれもがその内側にはさまざまな側面と言うか要素を持っているが、しかし、人間はお互いの内側まで踏み入ることの不可能性を語っている作品なのだと思う。男性の中にも少女性がある。同時に女性の中にも少年性がある。それはぜんぜんおかしくない、普通のことなのだけど、しかし、男性、女性という記号はその曖昧な部分を許さないところがある。記号が内側を決め付けるわけですよね。同じような話で、普段、ボランティアなんて鼻で嗤うような人間が、とつぜん無私としか言えない献身をしたりするときに、世間(ってなんだろうね)は彼を不器用なやさしさを隠した善人と褒め称えるが、それが本当かどうかなんて誰にも、それこそ本人にだってわからないことなんですよね。結局、この物語はそういうことを言っていた、のではないかと思う。

勝手に記号を付与して、勝手に理解した気になって、勝手な物語を捏造する。そんな行為がどれほどに人を傷つけるのか。兄の行為によって勝手な物語を押し付けられたことに苛立つ玲夫と、過去の行為によって縛られた兄の心から脱獄してきた脱子が出会う。それは縛られた心が解放を望む意思の表れ。脱子の存在が、過去の過去の束縛を紐解き、砕かれ、誰もが直視出来なかった闇を映し出す。彼女の柔らかな手は、現実を押し付ける世界に対しては無力だが、現実の手を逃れて幻想への旅のきっかけとなる。幻想への旅の中で、玲夫は過去の真実を知り、縛られた一つの世界を打ち砕くのだ。それは現実にとってはなんの痛痒でもないかもしれない。現実は今までどおり彼らに記号を張り続けるだろう。それでも、一つの区切りを得た彼らは現実と戦っていくことが出来るのだ。

(でも、おそらくこう書いていること自体、登場人物に勝手な記号と物語を押し付けているに過ぎない行為なんだろうな…)

なんかいろいろ書いたけど、脱子かわいいよ脱子。名前を呼ばれると胸がぱああーってなっちゃうとか可愛すぎるよ。蓉さん黒いよ蓉さん。そんなところがかわいいよ蓉さん。敬語とか萌えるっすよ蓉さん(台無しだ)。

追記。感想を書いたあともいろいろ納得がいかないので、他の感想を読み漁っていたところ、この感想(激ネタバレ含む)がすっきり物語構造を分析していた。マーベラス。性的なものを軸に読めばよかったのかー。

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