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2009.03.23

『とある魔術の禁書目録(5)』読了

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とある魔術の禁書目録(5)』(鎌池和馬/電撃文庫)読了。

これは面白かった。というかすごく好きだなー。なんか巻ごとに評価が180度異なっているあたりが自分でも面白いのだが、5巻まで読んでみると、だいだいこの作者の位置付けが自分の中で出来てきた感じもする。まず言えることは、この作者は、設定や物語のテーマの作り込みは相当にこだわって書いていることは間違いないと思う。世界観については細部まで設定しているみたいだ。物語が持っているテーマも相当に深いところまで見えているようにも思う。例えばこの5巻は、3巻にて虐殺を繰り返し、純然たる悪人として描写されていた一方通行が、悪人は悪人として自覚しつつ少女を助けると言う話になっていて、いいなあと思うのだった。ここで作者はきちんと自覚して書いているんだなーと思うのは、一方通行があくまでも自分を悪人だと認識しているところだと思う。別に一方通行は改心したわけじゃないんだよね。まあ物語上は、一方通行は実は虐殺なんてしたくなかった、自分の能力にまつわる絶対の孤独の中にいたのだ、と言うことが描写されているわけだけど、それで彼の罪が消えるわけじゃない。後悔があったとしても、許されるわけではない。そのことを一方通行は自覚している。自分がどうあがいても大量虐殺者であり、悪であると自覚している。それでもなお、彼は自分を頼ってくる少女を救いたいと思ったわけだよね。この辺は上条さんにぶん殴られて生まれて初めての”痛み”を味わったことで、彼の中のなにかが変わったのかもしれないし、あるいは最終信号の言うとおりもともと彼が持っていたものなのかはわからないのだが(このあたりの描き方はわりと作者は自覚的に曖昧にしているんじゃないかなーと思う)、どちらにせよ、悪人だって善を行うことは出来る、行っていいんだと言うことをきちんと描いているところは説得力があったし、僕は非常に好きなところだ。一方通行、いいじゃん。こいつ格好良いよ。3巻であそこまで悪として描きながら、悪のままに格好良く描く(悪人が善を為すことを説得力もって描く)ことに成功していると思うのだった。

ただまあ、最大の問題は、作者は根本的に小説が下手なんだろうな、と言うところなわけで(やべ言っちゃった。でも、そう思うんだからしょうがない)。一方通行の話がすばらしい一方で、上条さんの話がどう考えてもいらない…。闇咲逢魔はぜんぜん悪役としての魅力が感じられないし、その動機もなんだかなーと言う感じだし…。そもそも誘拐する必要すらなくね?素直に力を貸してもらえばよくね?というように根本的に物語に問題がある。冗長になりやすいという作者の欠点が、短編においては冗長さを通り越して単純に薄い物語になってしまっているように感じる。ぶっちゃけると内容が無いよう(すまん)。このあたりに作者の描きたい物語に力量が追いついていないと感じられるのだった。結局、語りたい物語のテーマを登場人物にそのまま語らせたり、とりあえず物語につまったら上条さんの説教で切り抜けたりと、非常に小説的に無粋であると思う。おそらく、このあたりにこの作者の悪い部分なんだろうなー。

だが繰り返すが物語そのものは面白い。着眼点がいいと言うか、物語的に”わかってる”感があって、そこは好ましく思えるんですよねー。だから、作者の持っている無粋な部分が出てこないとすごく面白く思える。問題は、これは作者の未熟さなのか個性なのかが現時点ではよくわからないということだな。まあまだまだ続きは出ているので読みながら見極めて行けばよいかな。

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コメント

禁書は積みっぱなしにしてるんですが、作品のあらゆる特徴が、あの時代のラノベの王道も王道って感じですね。小説が下手って辺りが特に。

投稿: hatikaduki | 2009.03.23 23:01

あの時代、と言うのは実はあまり良く分からないんですが、当時は戯言シリーズも継続中で、空の境界の講談社ノベルス版が出た時期でしたか。その亜流が星の数ほど出てきたような覚えがあります。西尾維新の影響もあってか、異常にキャラクター化(記号化)が進んでいた印象もあるなあ…。この作品は間違いなくその流れの継承者ではあるのかもしれません。

投稿: 吉兆 | 2009.03.23 23:31

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