『ゼロの使い魔外伝 タバサの冒険(3)』読了
『ゼロの使い魔外伝 タバサの冒険(3)』(ヤマグチノボル/MF文庫J)読了。
当初から無口で無表情なキャラを主人公にするなんてチャレンジャーだな、と思っていたのだが、あとがきで描くのを苦労したと書いてあって、やっぱりなあ、などと思った。でも、当初に比べるとタバサは大分感情表現がはっきりしてきているよな。作者がキャラをつかんでいるのか、描写が増えたような気がする。無口な子がちょっとばかり感情の揺らぎが垣間見えるところは萌えポイントですだよ。
今回のタバサの冒険は、バラエティに富んだ内容となっている。タバサとシルフィードの出会いから、とある老戦士をめぐる奇譚、タバサの初恋の話に、”タバサ”誕生の物語。今までのような連作短編とは異なり、各短編のつながりは弱いが、その分、タバサの明らかにされていなかった側面を描写する内容になっていて面白かった。
とくにタバサの初恋の話は、本編では今一つはっきりしなかったサイトに対するタバサの感情を、本編の時系列に沿って描写されており、本編のさまざまなシーンにおけるタバサ側の描写が明らかになっている。うーん、シルフィード視点でのタバサも大概に悶えるが、タバサ視点になると悶えるレベルが天元突破するなあ。無口で無表情で何を考えているかわからないタバサの貴重な一人称ですよ。無表情な顔の内側で繰り広げられる悶々とした感情に、読んでるこっちが情熱を持て余す。マーベラスである。
あとは”タバサ”誕生の物語も面白かった。深窓の姫君シャルロットがいかにしてシュバリエのタバサになったかの話。ストーリーはシンプル極まりないのだが、ヤマグチノボルの安定した語り口のため安心して読める。けっこうきつい話なのに、読者に過度のストレスを与えないつくりは弱点でもあるが、心地よささえ感じられるストーリーテリングは認めるべきところであろう。
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