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2009.02.18

『東京ヴァンパイア・ファイナンス』読了

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東京ヴァンパイア・ファイナンス』(真藤順丈/電撃文庫)読了。

これは弱者たちの物語なのだ、と思う。ヴァンパイア・ファイナンスが関わる人々は、すべてなんらかの形で行き詰っている。生きることがつらくて、なにをやっても上手くいかなくて、どうにかしたいと思っていてもどうにもならない。でも、なんとかしたい、と言う焦りだけは人一倍ある。どこかに一縷の希望を追い求めては、そんなものはありはしないとうなだれる。そんな弱い人々ばかりだ。それぞれには、他人から見ればつまらないことかもしれないけれども、本人にとっては切実な問題を抱えており、その問題を解決するためには、わずかな勇気と、お金が必要なのだ。しかし、彼らにそんな都合の良い神の助けは存在しない。蜘蛛の糸はどこにも見えない。そして、そんな彼らのもとに現れたのが、異常なバイタリティを持った少女、万城小夜。彼女は、躊躇う彼らの背中をどやしつけ、蹴り飛ばすパワーと、駆け抜けるための力と、なによりも金を与えてくれるわけだ。そして回りだす人々の問題を、小夜は笑いながら走り回ってひっくり返って走り回る。狂騒的で、悪夢のような夜を走り回る。これはそんなおはなしだ。登場人物たちは、みな弱い。負け犬、落伍者、アウトサイダー。何らかの理由で、平凡な人生を送ることが出来てない人たち。そんな人たちも、みなそれぞれに悩み、苦しんでいる。本来ならば他の道もあったはずなのだが、それを選ぶことが出来なかった人たちなのだ。それを自業自得、自分が選んだ道なのだ、と言うことは、正論かもしれないが無意味だ。人はみなそれほど強くは無い。いつだって、人間は現実に向き合い、妥協し、自分をごまかし、嘘をつき、欲深い。それは人間の持つ業であり、否定することは出来ないものなのだ。だが、小夜は、そんな人生を諦めた人たちに対して、ふてぶてしく言う。「じゃあ、いくらあれば目的を果たせるんだ?」そうして彼女は、彼らの背中を押していく。それは冷酷さか、悪戯心か、優しさか、それとも愛なのか。それは本人にも分からないことなのだろう。物語はそれぞれの問題にひとまずの(そうとりあえずの。本当の終りは、小夜ではなく本人がつけるしかないのだ)決着迎える。とくにだれかが救われるわけでもない、それでも新しいなにかをはじめられるだけの決着を。そして最後のエピソードを迎える。そこで小夜自身もまた、救われたただの一人の人間に過ぎないことがわかる。弱く、ずるい、ただの人間。平凡な人間だ。彼女もまた、彼女自身が生きるために動いていたに過ぎない。彼女はヴァンパイア。血を吸う化物。彼女の行為はなんの意味もない、目的も無い、理由も無い。ただやりたかったからやったのだ。だが、それは僕には救いのように思えるのだ。それが、きっと彼女のあり方なのだろうから。

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