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2009.02.13

『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』読了

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ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』(田尾典丈/ファミ通文庫)読了。

非常に厳しい読書だった。これほどまでに読むのに苦悶したのは本当に久しぶりだ。主観だが、『カラマーゾフの兄弟』もここまで読むのに苦労した記憶はなかったぞ。特に序盤にかけてが非常につらい。100頁ぐらいまで読むのに3~4日はかかった。しかし、この苦悩は作品の質によるものではなくて、純粋にオレの問題なのだった。どうも自分はエロゲー(ギャルゲー)のテンプレートに対する本能レベルでの拒否反応が発生するらしく、いかにもお約束のエロゲー展開と、その展開をにやにやしながら享受する主人公の無自覚さに耐えられず、10頁読んでは休憩する、という手法を持ってしてどうにか切り抜けたのであった。別にこの展開が悪いわけではなくて、おそらく後半ではこのシステムをひっくり返すところに行くんだろうなーと思っていたので、ここは我慢のしどころだと思ってはいたものの、それでもなお途中でなんど諦めようかと思ってしまった。だが、物は考えよう。自分が何故、エロゲーのお約束展開に拒否反応を感じているかと言えば、それは嫌いだから、と言うわけではない。拒否はむしろ非常にそのセンスに親しんでいるがゆえの、羞恥心から発するものなのだ。自分が容易く主人公の喜びの感覚を理解出来てしまうがゆえの気恥ずかしさなのだ。よって、このつらさは自分にとって受け入れ乗り越えるべきものであると思うのだがあまりにも脱線が過ぎるので話を戻す。ともあれ、中盤までは本当につらかったのだが、”ゲーム”という主人公の全能性を肯定してくれるシステムが”現実”に侵食されていくあたりから非常に読みやすくなった。

これはいわゆる『なんでエロゲーヒロインは一度に一人しか攻略できねえんだよ』問題、あるいは『誰かヒロインを助けた場合他のヒロインはどうなっちまうんだ』問題に取り組んだ作品であると言える。専門用語ではKANON問題とも呼ばれていますよね。これはエロゲーの設定上の問題として処理されてしまう構造を、現実に無理矢理適合した場合、どのような現象を引き起こすのかという思考実験的な側面のあるメタエロゲー作品であります。もっとも、それは田中ロミオが『CROSS†CHANNEL』ですでに通過した道だがな!と言っても、結局それを解決出来た問題ではないので(むしろ田中ロミオはその不可能性を謳い上げた)、その問題に取り組んでいると言う点については評価しても良いのではないかと思う。ただ、それが完全に上手く言っているかと言うと微妙な側面もあるので評価はやや難しい。現実に侵食される”ゲーム世界”の中で、本来ゲーム的なヒロイン達の事情を”現実的に”解決することを求められているのに、完全にはエロゲーの文脈からは逃れられていないところがあるので、手放しでは褒められないのだ。なんか基本的に話せばわかると言うか、素直すぎるかなー。顧問の先生!お見舞いに行くのはそもそも顧問として社会人として当然のことだと思います!とか、ちょっと会話しただけで妹の人間関係が円満になるとか。現実を反映しているとは言うものの、これはこれでライトノベルというまた別の文脈に支配されているだけのようにも思う。

ともあれ、やろうとしていることは意欲的ではあるので、一発ネタで終わらない普遍性のあるテーマとして書いていって欲しいと思う。なお、ラストの主人公の選択には賛否両論あろうが、自分は肯定も否定もしないスタンスで。本当に彼女たちを好きなのならもう一度繰り返すべきではないと言う意見はもっともだし、こんどこそみんなを幸せにするという考えも間違っていない。重要なのは、どれだけ本気でそれを願えるか、と言うところだろう。なお、同様のテーマをものすごい力技で描いた作品としてエロゲーだがニトロプラスの『スマガ』(リンク先18禁)があるので興味がある向きはやってみると良いと思う。

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コメント

エロゲーはFateから入りました。伝奇と学園恋愛物を中心にそれなりにやりましたが、結局Fateを超えるのはなかったですね(魔法使いの夜が楽しみです)。

いわゆる学園恋愛物も人気作といわれるものをいくつかやったのですが、戯画&丸山の三部作(ショコラ・パルフェ・この青空に約束を)が一番よかったです。

で、ギャルゲーやってていつも思うのは攻略ヒロインが多すぎるってことです。ゲームを買った以上、フルコンプをしないと気がすまない性質なのですが、興味のないヒロインの攻略が億劫で億劫で。どう見てもサブキャラのほうが栄えるキャラをわざわざ攻略対象にする必要があるのか、その分を削ってメインヒロインの話をもっと濃くしてくれといつも思います。上記の三部作でもショコラなら攻略ヒロインは4人でいいし、パルフェも4人、この青空なら3人でいい。

どの作品でもだいたいそうですが物語としての盛り上がりを考えた場合、攻略対象にふさわしいのは3~4人だと思います。“名脇役”って考え方はギャルゲー界にはないのかなあ。いや“名脇役”がいないからこそギャルゲーなのか。

スマガは体験版だけやりました。意欲作であることはわかるのですが、私の好みとして何かに対する皮肉や批判が露骨な作品はエロゲに限らず好きではないのでちょっと。Key作品はあの独特な世界観とヒロインについていけず。

私の好みの作品はFateの桜、ショコラの香奈子、パルフェの里伽子、この青空の海己と、救われるべきヒロインのルートが大団円になってるのが特徴でそういうのが好きなのかあなと思ってみたり。

まあ、ただのきのこと丸山の信者なだけかもしれませんが(苦笑)。

投稿: きのこ | 2009.02.14 01:05

奈須きのこ的な伝奇ものが好きならば、ニトロプラスの虚淵玄(『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』が有名ですね)、東出祐一郎(『あやかしびと』)星空めてお(『腐り姫』)などはいかかでしょう。

丸戸史明のような恋愛ものがよければ、ヤマグチノボル(けっこうこの人もエロゲーを書いているんですよね。『グリーングリーン』など)やタカヒロ(『つよきすっ』が名作)などをオススメします。まあ、実はエロゲーのシナリオライターのことを語り始めると止まらないのでこのぐらいで。

>ギャルゲーやってていつも思うのは攻略ヒロインが多すぎるってことです。

すごいですねー。きちんと全員クリアしているんですかー。僕はそもそも全員をクリアなんてとても出来ません。一人か二人クリアしたらそれ以上解く気になれないんですよ。自分は唯一性にやり直しを効かない選択をしたというのに、なんで別のヒロインを攻略しなくちゃならないのが納得いかない!と言うか。主人公にこのヒロインを選ぶだけの主体性が感じられないのがあまりしっくりこないのですよね。別に誰を攻略しても主人公はかまわないんじゃん、みたいな。丸戸史明などはそのへんかなり自覚的で、ヒロインを主人公が好きになる過程をすごく詳細に書き込んでいるので、それぞれのヒロインのルートに入ることに納得できるんです(『世界で一番NGな恋』なんかとくに自覚的でした)。

まあ僕だけのこだわりだとは思いますが…。

投稿: 吉兆 | 2009.02.14 16:58

×丸山→○丸戸

うわぁ大恥。全然気づかんかった…。

なるほど、管理人さんは“不可逆性”の観点から納得できないと。そういう考えもありますね。しかし、日本人は“やり直し”って考え方が好きですからねぇ(苦笑)。決断に自信がないというか。そもそも決断力がないというか。

オススメ作品の情報どうもです。さっそく体験版をやってみようと思います。

投稿: きのこ | 2009.02.14 19:04

>“不可逆性”の観点から納得できないと

まあそんな大層なもんじゃなくて、あくまでも個人的にすっきりしないと言う話ですけれども。

>さっそく体験版をやってみようと思います。

趣味に合えばよいのですが。こればっかりは個人の嗜好ですからねー。

投稿: 吉兆 | 2009.02.15 00:07

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