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2009.02.16

『アクセル・ワールド01 黒雪姫の帰還』読了

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アクセル・ワールド01 黒雪姫の帰還』(川原礫/電撃文庫)読了。

電撃大賞<大賞>受賞作。作者がWeb小説で有名な人…らしい。Web小説から商業に、というケースだと最近では『迷宮街クロニクル』などが思い浮かぶが、こちらの場合、新人賞を受賞していると言う点が異なるところか。と言うか、この作品は普通に大賞を受賞していて、その作家がたまたまWebで作品を発表していたに過ぎないように思えるので、Webのカリスマ云々は純粋に販促に過ぎないと捉えて問題なかろう、と思われる。

ハルユキの黒雪姫に対する感情は、男女の恋愛感情よりも、主君に対する騎士の心象に近い(恋愛感情も無いではない)、と言うところは強調すべきところだろう(ライトノベルにおいて、主人公とヒロインの関係と言うのは、恋愛関係と言う、なんというかお約束的なものがあって、それを逸脱することはほとんどありえない)。もっとも完全に無いわけではなくて、黒雪姫側にはたぶんに恋愛サイドの心の動きはあるのだろうと思われるが、主人公側においてはほとんどそれはみられない。もっともこれはあくまで一巻であると言うことを考えると、主人公とヒロインの関係性を固定することは望ましいとは言えず、曖昧にしているところもあるのだが。そうであったとしても、主人公とヒロインの関係性を流動的にしているという点においても、単純な恋愛関係を構築させるつもりない、と言う点を感じ取れる。

ハルアキが「自分は信じられない。けれど、あなたが自分を信じてくれたことを信じる」みたいなことを言ってて、あーグレンラガンだなーと思った。それで思い出したけど、これって契約→再契約の話そのまんまなのねー(この話)。こんなところにも、主人公とヒロインの関係性の複雑さを垣間見える。彼らは、賢者と勇者の関係であり、主君と騎士の関係であり、恋人の関係でもあるのだが、その関係が流動的で、ある瞬間ごとに違った関係が表に出てくるのだ面白いなーと思うのだった。ハルアキ側は明らかに恋愛感情よりも騎士道精神の方が強いあたり、黒雪姫は報われて無いなーと思った。

グレンラガンではカミナは死ななくてはならなかった。シモンがカミナを超えるには、必要なことだったのだ。この物語ではハルアキと黒雪姫の間にも同様の関係性が見られる。つまり継承と克己というテーマがあるように思うのだが(少なくとも、ハルアキと黒雪姫は現時点では対等の関係にはなっていない)、グレンラガンと異なり、こちらでは男女の性差もあることもあり、死以外に対等(以上)の関係になる可能性もある(ぶっちゃけ恋愛関係による関係構築)。この辺は現代的なテーマを上手く消化するとともに、考えられた構成だなあと思った。

それにしても主人公の言動はすごく一貫しているなー、と思う。いじめられっこが力を手に入れると大抵はコンプレックスを暴発して我欲のままに行動するんだけど、この主人公は分を弁えるということを知っている。ようするに大人なんだよな。やりたいことではなく、やるべきことを選択できる(某ラインバレルの主人公に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい)。そんな主人公だから、ラストバトルの”結末”につながっているんだよな。傷ついた自分よりも、傷つけられた相手の気持ちを思いやれるんだ。あれでとどめを指していたら、単に裏切られた憎悪を発散したに過ぎない。そうではなく、”許す”と言う行為を選び、現実世界で起きた責任を引き受ける(しかも、相手の責任を自分でも一緒に背負う)。これは半端な覚悟では出来ないよなー。惜しむらくは、そのあたりの描写があっさりしていて、その選択の重さがきちんと出ていないところなんだけど、これはしょうがないかもなー。だれもそんな重い選択を見たくないもんなー(だからこそ必要だったような気もするが)。

まだこの話だけではわからないけど、SF設定は相当に煮詰めたものがありそうな?単に現実世界にオーバーテクノロジーを持ち込むのではなく、テクノロジーが社会に与えるところまで詰めているような感触があるなあ…。作者の方向性が、ライトノベル作家なのか、SF作家なのかによって変わって来ると思うけど、まだそのへんの評価は保留。

どうでもいいこと。川上稔って、絵もかけるんか…。多才な人だなあ。

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コメント

 『アクセル・ワールド』読みました。
 大賞の名に恥じない、素敵な作品でした。

 >契約→再契約の話そのまんまなのねー
 Fateにしろギアスにしろ、微妙な関係だからこそ、場面場面で出てくる面白さってありますよね。

 >スクールカースト(って言うの?)で主人公のコンプレックスでヒロインに選ばれて唯一性を獲得してヒーロー!

 ハリポタにしろシンデレラにしろ、どん底にいる主人公がある種の社会的な地位や力を得て幸せになるっていうのは、読者にとって気持ちがいいのでしょう。王道最高。

 >『true tears』
 ああ、大好きな作品です! 登場人物の心の機微を描ききった数少ない作品です。てか、ブルーレイはまだでしょうか?
 
 

投稿: ヒロ | 2009.02.17 19:09

>王道最高。

王道は王道だけあって、きちんと面白くするのに実力がいるんですよね。正直最初はあまりにも既存の展開をなぞっていて面白くなるのか不安だったんだですけど、想像以上に隙の無いつくりで見事でした。まあ序盤の主人公への追い込み方が嫌いな人はいるかもしれませんけど。

>ブルーレイはまだでしょうか?

いやー、ブルーレイを出すのなら同時に出してくれないと困りますねー。買いなおす気はしないですよ。

投稿: 吉兆 | 2009.02.17 21:13

>Webのカリスマ云々は純粋に販促に過ぎないと捉えて問題なかろう、と思われる。
 
Web上の人気はかなりの物ですぜ。
(現在進行形で)

投稿: エピクロス | 2009.04.30 02:25

すいません、言葉が足りませんでした。

>Webのカリスマ云々は純粋に販促に過ぎないと捉えて問題なかろう、と思われる。

と言うのは、あくまでも編集部側で”Webのカリスマ”なるコピーを使っていたので、それに対する言及です。ちょっと売り方がいやらしいなー、と思ったので。まあ人気があるのは事実ですし、邪推であると言われればその通りです。

投稿: 吉兆 | 2009.04.30 23:14

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