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2009.01.28

『空ろの箱と零のマリア』読了

51pjgdxvtl空ろの箱と零のマリア』(御影瑛路/電撃文庫)読了。

御影瑛路の三年ぶりの新作。待ちに待ったと言うか、存在を忘れるところまではいかないが、新作を諦めかかるくらいには待った。とりあえず感無量。その内容については、作者もあとがきで書いている通り、ずいぶんエンターテインメント性が高くなったなあと思う。まるでライトノベルみたいだ。まあ普通の、と形容するには作者の個性が強すぎるけれどもね。作者らしい、異様で異形な物語は健在と言えるので、ファンにも安心。まあ窓口が広がったわけなので、それはそれで良いのではないかと思う。…正直、昔の尖りまくった作品も懐かしい気もするのだが…まあ、それは言うまい。

作品としてはループものの括られるジャンルであると思うのだが、実のところループそのものは本題ではなさそうだ。むしろ、ループする世界、”拒絶された教室”の異形なイメージが主眼ではないかと思われる。おそらく意図的と思われる描写の不足。そこかしこにはびこる違和感。どこか捻くれた物語。この物語は、”どこかおかしい”。その違和感が物語全体を支配していると言ってよい(その一種異様なイメージこそ、作者の持つ魅力だと僕は思っている)。それらが主人公のみならず読者を幻惑しているのだ。その状況を生み出している”存在”こそが真の黒幕なのだが、その黒幕とは、おそらく実態のある存在ではない。それは閉塞した世界、どこにも行けないと認識するイメージが生み出したものである。この物語は、そうした世界を閉塞させようとする存在と、世界を進ませようとする力のせめぎ合いで動いている。その対決は、無論、作品内で行われているのだが、いかに世界を進ませようと主人公たちが足掻いても、閉塞させようとする存在にはなんら痛痒を与えてはいないと言うところに、作者独自の世界観が生まれているようで興味深い。その世界観は、暗く歪んだ、それゆえにおどろおどろしくも美しい世界だ。僕はその世界に強く魅力を感じる。この歪んだ世界が、物語がどのような結末を迎えるのか楽しみにするとともに、すこしでも長く続いてくれることを願ってやまないのだった。

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コメント

“箱”とOなる人物(?)について最後までどうもよくわからなかったので消化不良感が残ったんですが、雰囲気を感じるのが主軸なんでしょうかね。理屈をこねくり回すうぐいす嬢の論証みたいなほうが個人的には好みかも。

ラノベに限らず非日常系のお話は問答無用の初期設定があるもんですが、もう少しちゃんと描写してほしかったってのが正直な感想。

…って二巻出てるのか。

投稿: 暗黒 | 2009.09.19 17:55

あまりハッキリと描写すると、それの持っている超越性が損なわれるので、描写の仕方には重要なところだと思います。まあうぐいすと違ってこちらの作品は超常現象ありの舞台設定なので、単純に比較は出来ないような気もしますけど。箱とOについてはとりあえず棚上げしておく必要があるかもしれません(そもそも人間に理解できる存在ではないのかも)。

投稿: 吉兆 | 2009.09.20 11:08

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