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2009.01.13

『ミラクルチロル44キロ Aパート・チロルアレンジ』読了

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ミラクルチロル44キロ Aパート・チロルアレンジ』(木村航/メガミ文庫)読了。

木村航らしい饒舌さに糊塗されているが、すごくまっとうな恋愛小説だった。空想とも幻想ともつかないイメージの乱舞が作者らしくて良い。”いのちの募金”という、読者としても一見としてわけが分からないものに、何の気なしに”一生”などと書き込んでしまったことから生じるファンタジー。複雑な家族関係が主人公の回りにあって、その現実からの逃避、と言うと言い方は良くないけれども、そう言った気持ちが背景にあって、その気持ちから”いのちの募金”に主人公が惹かれていく過程は実に納得がいく(木村航の作品は、物語の流れそのものを見ると不自然なところがあるけど、登場人物の感情の流れを追うとしっくりわかる作品が多いけど、これもその一つみたいだ)。”一生”をあげてしまったチロルチョコを、捨てることを返品することも食べることも選べない主人公の感情は非常に複雑ではある。それは、あくまでもぼくの想像であり誤読をするならば、自分自身の価値を信じることが出来ず、自分の必要とするものの存在を信じることが出来ない主人公の心情を表しているのだろう。だれかのためになるのなら、自分の一生などくれてやってもいいような。本当に自分の人生は必要なものなのか。あるいは、そこまで言語化出来ているものではないかもしれない。漠然と”ただ生きることに居心地の悪さ”を感じてきた少女の気持ちそのものなのだろう。だから彼女は輝きを放っている過去の情景に心を奪われるのであり、そこに出てきた田丸くんに恋をするわけだ。それは本当の恋と言うよりも、輝きに対する憧れのようなものではないかと思うのだが、それを主人公がどこまで理解するのか、あるいは理解しないでこのまま突っ走るのか(それもまたあり、か)、どちらにせよBパートの展開に期待したい。

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