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2008.12.09

『フリーランチの時代』読了

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フリーランチの時代』(小川一水/ハヤカワ文庫JA)読了。

小川一水らしい人間性というものへの信頼が感じられるSF短編集。もっとも作品によっては無常観を漂わせるものもあり、作品としてはバラエティに富んでいる。それでも根底には前向きな性向がにじみ出ており、作者らしい。

以下、各話感想。

「フリーランチの時代」
異様に軽い異星人侵略物…か?たまたま出くわしてしまったエイリアンに食われてしまった主人公たちの選択は…まあ、ものすごくてきとーでした。い、いや本当にこれでいいのか!?仮にも人類の夢である不老不死を扱っているのに…。ああ…不老不死だから決断とか判断とかも無意味になっているのか…。

「Live me Me.」
五感のすべてを奪われた女性が全身義体となって蘇る話。正確には、全身義体になるまでの過程が詳細に描かれている。最初はただの信号のやりとりから始まって、ついには義体が完成するまでの流れが魅力的だなあ。もっともこの落とし方にはどういう意味があるのか良く分からなかった。人間の”魂”の所在をめぐる話だったのかな?

「Slowlife in Starship」
なんかそのー…ヤマもオチもないんですが。SF設定の意味が良く分からなかったので他のサイトの感想を見てみたら、どうやら宇宙ニートの話だったみたい。そうか、たいした労働もせず、他者とも接触もせず、美少女ロボットだけを旅の共にして宇宙をさすらうと言うの話だったのね。説明されるまで良く理解していなかった自分に絶望。まあそれはともかく、最終的にニートっぷりについて肯定も否定もしていないところが作者のやさしさと言うものかしら。

「千歳の坂も」
老いることが犯罪となってしまった世界でやりとりをするある役人とある女性の壮大なスケールで描くおいかけっこ。トムとジェリーみたいな話か(違うと思う)。人間の生き死についてはどちらにせよ強制されることは鬱陶しいもの。生きるか死ぬかは問題ではなく、いかに生きるか、いかに死ぬかの問題でしかない、と言う当たり前の結論のような気もする。

「アルワラの潮の音」
「時砂の王」のスピンオフ。アレクサンドルが主要な役割を果たす番外編の位置付けか。ETに対して絶望的な闘争を繰り広げるメッセンジャーたちという基本路線は変わらないが、メッセンジャーたちとアルワラの人たちの間にある認識のズレがくっきりと目立つ。この作者にしては非常に悲劇性が高いというか、シニカルな結末。まあ近代的な視点に身を置き過ぎと言う批判もできそうだけど…。

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