« 日記というか雑記 | トップページ | 買ったもの »

2008.11.27

『黒竜潭異聞』読了

51fgollvlcl

黒竜潭異聞』(田中芳樹/光文社文庫)読了。

田中芳樹は中国ものになるとひどく生き生きとしているなあ。中国の歴史上の出来事を膨らませたのもあれば、完全にオリジナルのものもあって、彩り豊かで楽しいです。田中芳樹は短編だとその上手さが際立つな。冒険譚もあれば怪異もあるけど、共通しているのは「人間って…面白ッ!」というところ。人間の高潔さ、醜さ、矛盾を含めて、ひっくるめて描いているところが田中芳樹の特徴なのであろう。

各話感想。

「延城の少女」
12、3才の少女が包囲する敵軍を突破して援軍を求める話。まあ、本当にそれだけの話なので面白いとかそういうことは言えない。特筆すべきは、これが”史実”だという話だよな。凄い女の子がいたものだ…。

「微音殿の井戸」
なんかこのオチはどこかで聞いたことのある話だぞう…。人生が万事塞翁が馬と言うか、因果応報というか、権力を前にすると人間はどうしてこうまともな判断力を失ってしまうのか、というブラックジョークにも読める。

「蕭家の兄弟」
皇帝家の兄弟喧嘩は天下を揺るがすのう。周囲の人は大変だ。殺って殺られてやり返して。そんな思いまでして手に入れたものも、泡沫の夢のようにはかなく散る。バカバカしくも、無常観。とにかく、このアホ兄弟をなんとかしろ。こいつらのせいで何万人人が死んでいるんだ。

「匹夫の勇」
武勇のあるだけでの男は中国では生きていけない。自分、不器用ですから。なんて言っていると一生を台無しにされるでよ、と言う話。本人は、ひたすら真面目に勤めているだけなのに、その報われなさっぷりったらもう…。

「猫鬼」
爽快な冒険譚。主人公がめずらしくヒーローしていて楽しい。オチはまあ他愛もないが、それよりも主人公のその後がサラっと語られていて、そのこと自体にビビる。作者は鬼か。

「寒泉亭の殺人」
なぜかミステリ。どっちかというと清涼院系のバカミスかもな…。学生時代に書いたわりには、文体が全然変わっていないのは凄いと言っていいのだろうか。

「黒道兇日の女/騎豹女侠」
この二編は女侠、ジョウ隠(字が出ねえ。耳が三つ)の怪異譚のような冒険譚のような話。颯爽と登場して、疾風の如く去るこのストイックさがたまらんね。神秘的な美女というイメージだが、伊藤勢のイラストの力も一役かっていると思う。

「風梢将軍」
叙述トリックを仕掛けるとは!なんというかヘンテコな話であった。

「阿羅壬の鏡」
結局、この後の阿羅壬はペルシャだかあっち方まで流れていったというわけですよね?

「黒竜譚異聞」
富貴を望んだ男の栄光と末路。本来は長編になりそうな話をどうしてこんなにスピーディーに閉じてしまえるのか。勿体無い。そのまとめ方にソツがないのも凄いけど。でもまあ、ラストはけっこう幸せそう。ここまで好き勝手出来ればいいんじゃね、と言う気がする。うらやましい。まあオレだったらそもそも富貴は望まないけどな。器が小さいとか言うな。

|

« 日記というか雑記 | トップページ | 買ったもの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/43249153

この記事へのトラックバック一覧です: 『黒竜潭異聞』読了:

« 日記というか雑記 | トップページ | 買ったもの »