『とらドラ9!』読了
『とらドラ9!』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)読了。
と言うわけで竜児のターン。つっても動きようがねえんだけどさ…。それでも自分なりの答えを出そうと足掻いていたら、起こしてはいけないものまで呼び起こしてしまったという。つまり、”竜児の問題”である。今まで、なんだかんだで竜児は他人のことばかりやってきた。大河とともに走ったことも、亜美に手を伸ばしたことも、ぜーんぶ自分のことなんて考えていやしねえ。でもねー…冷静に考えれば、大河や亜美や実乃梨と同じくらい、竜児も背景をかかえているのだ。思い返せば、一巻の時点でその種はまかれていた。彼が悩んでいたことはなんだった?大河を応援してやろうと思ったその気持ちの根本には何があった?彼が高校生にしてはハイレベルな家事スキルを持ち、家を守った理由は何?…それは、自分がアウトサイダーであり、”ふつう”の中にはいないという気持ちではなかったのか(余談だが、アニメのとらドラはこのあたりの葛藤がかなり省略されているので、小説とは基本別物と考えた方がいい。物語の閉じ方もオリジナルにした方が収まりはよかろうなあ…閑話休題)。その、言うなれば竜児の闇が表面化してきている。本当に、自分は、望まれた子供だったのか?それは問うてはならない言葉。聞いてはならない答えだ。でも、一度口にした言葉は取り戻せない。消えてなくならない。竜児の想いはどこに行くのだろうか。
蛇足。亜美はやはり退いてしまった。まあ、自分のことだけを考えるには、彼女は優しすぎたな。そのあり方に賛成は出来ないけど、実乃梨の言うとおり、自分の幸せぐらい自分で決めたっていい。選んだそれが正解だ。あと実乃梨。彼女の幸せには、友人を不幸にして成り立つものではないんだな。その想いが、前巻までは空回っていて、実乃梨を物凄く自分勝手な女に見せていた。傲慢とさえ言える。なぜなら大河の気持ちを無視していたのだから。しかし、今は違う。彼女は大河に選択肢を見せた。突きつけた。その上で、”自分の気持ちをきっぱりと切り捨てた”。大河の選択がどのようなものになるにせよ、実乃梨と竜児が付き合う展開はもはやない。それが実乃梨の選択であり、誠意なのだ。大河は…もはや取るべき道は多くない。おそらくはこれは反復の物語となるだろう。竜児が大河にしたことを、今度は大河が竜児にするのだ。与えられる側から、与える側になる。それこそが唯一二人が対等になる関係への道だからだ。そこまで行けば…まあ、これ以上言うのは無粋か。
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