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2008.11.12

『サーベイランスマニュアル(3)』読了

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サーベイランスマニュアル(3)』(関涼子/GA文庫)読了。

これまで母であり姉であり女神であった寧が、一人の少女としての領域に下りてくると言うのが二巻からの物語テーマであったようだ。かわいそう、と言う言葉通り、周囲を一段上の目線から眺め、透徹した寧の存在は、すでに無い。いるのは、少年に自分が受け入れてくれるのかどうかと言うことに想いに怯える一人の少女だ。神権の失墜。偶像の破壊。しかし、それこそが人間らしさと言うものではあるのだよなあ。超越から凡俗へ。超人から凡人へ至る道を、寧は歩み始めたのだ。良きかな。

しかし、状況が彼女をただの平凡なる少女のままにはしておくことは無い。彼が、彼女を受け入れてくれるかもしれない亮輔が、自らを犠牲とする殉教者としての道を歩み始めている。すべてを救うための供犠。救世主の歩みだ。彼にはもはや他の道を取る事は出来ない。平凡な幸せに背を向けて、大きな目的に殉じていく。凡俗から超越へ。それは寧と正反対の道だ。

二人の望みは同じ。どちらも相手の幸せを願っている。しかしその行為はすれ違っている。相手のことを思うがゆえに、相手の望みに気がつかない。それは愚かしさではある。だが、まだ手遅れではないはずだ。まだ結果は出ていないのだから。今にも失われんとするものを、彼らはつなぎとめることが出来るのか。出来ないのか。つなぎとめたところでそこに幸福はあるのか。それすらも分からない状況の中、おそらくは物語の最終局面へ続く。

彼らが最良の選択肢を得ることが出来ますように。それはフィクションに対してさえも願いたくなる、祈りである。

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