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2008.09.08

『ダークナイト』を観て来た

・バットマンの新作『ダークナイト』を観た。

・こんな悪意と不安と緊張に満ちたアメコミ映画を初めて観た気がする。

・160分という長丁場ながら、ほとんど弛緩するところが無いのが凄いのだが、何より、「アメリカ、一体どうしちゃったの?」感がバリバリ。今のアメリカは、もはや”正義が勝つ”と言うことが、幻想でしかないということを知ってしまったとしか思えない。

・正確には、幻想(正義は勝つ)と現実(しばしば正義は敗北し、不条理がこの世を支配する)のせめぎあいが、この作品には満ち溢れていると言えようか。

・バットマンがいかに全力でジョーカーに立ち向かっても、この世の悪の象徴とも言えるジョーカーは、まともに勝負さえしてくれない。ジョーカーは、バットマンとは次元の違う場所に泰然としてあり、たとえ彼を捕縛しようとも、その悪意は逃れることが出来ない。この世の悪とは目に見えないものであり、バットマンの力は、悪そのものには手が届かないのだ。

以下、自分が面白かったところをメモ。

・バットマンもジョーカーがフリークス(怪物)として描かれているところが、あまりにも悲壮だった。フランケンシュタインズモンスターの悲哀にも似た、哀切さを感じる。滅びの美学とでも言うものか。

・民主主義に対する深い疑義が差し挟まれているところが興味深かった。ネタバレになるので詳しくは書けないのだが、市民の多数決で決められたことが、しかし、市民の暗黙の内に破り捨てられる。しかし、それこそが本当に正しいことだったのである。これはちょっとびっくりしてしまった。

・正義の味方の崩壊が描かれていることが圧巻だった。正義を為すためには積極的に悪を為さねばならぬ矛盾。人を救うためには人を殺さなくてはならない矛盾。何より、正義を為すためには、正義とは幻想であることを受け入れなければならないという矛盾。バットマンは最後までその矛盾に苦しめられ、最後にある一つの決断を下す。ここが、もう、なんと言うか言葉にならない。

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