『スクランブル・ウィザード』読了
『スクランブル・ウィザード』(すえばしけん/HJ文庫)読了。
H文庫の新人だけど、これが良かった。このレベルの新人がこれからも出てくるのであれば、HJ文庫は信用出来る。破綻が無く、ケレンも無く、シンプルな物語だけど、その物語に妥協がないあたりが好ましかった。特に、新人としては、本当に驚くほど破綻が無く、意外なほどにケレンが無い。ケレンが無いというのは欠点にもなりうるところで、そのためか主人公の力や、相棒の力の凄みが見えてこないというところがあるものの、逆に敵役のキャラクターを立てて行くことで、相対的に凄さが見えてくるという手法をとっていて、極めて技巧的と感じる。そして、重要なところは、バトルものというだけではなく、主人公とヒロインをつなぐ、学園ものとしての側面もきちんと描かれているところで、学園ものとして二人が関係を深めていくことによって、主人公は過去と向き合い、ヒロインは未来と向き合うことによって、最終的なバトルを仮想的な葛藤の乗り越えとして機能させているところも見事だった。バトルを潜り抜けたことで、彼らの問題がなんら解決を見たわけではないけれども、それでも乗り越えるだけの力を決意を得た。そこに至るまでの流れがなかなかに美しく、おそらく、この作者は只者ではない、と言う印象を深めたのであった。もっとも、繰り返しになるが、派手さは無く、ケレンはないので、見た目に地味に思われるかもしれないが、僕はこのくらいの方が好きだな(我ながら年をとったものだ)。
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