『アンゲルゼ 最後の夏』読了
『アンゲルゼ 最後の夏』(須賀しのぶ/コバルト文庫)読了。
すっかり軍隊色が強くなってきたことに、新鮮な気持ちになる。しかし、考えてみれば須賀しのぶは、キルゾーンシリーズを始めとしてSFアクション作品を数多く書いている作家なわけで、むしろホームグラウンドなのか。流血女神伝の印象が強かったせいか、意外な印象の方が強かった。
閑話休題。と言うか本題。
それにしても主人公を取り巻く環境はますます苛酷さを増してきている。前回までは曲がりなりにも日常と非日常の境目を描いていたものの、今回は完全に非日常がメインとなっているところに須賀しのぶ容赦ねえ!と思った。つまり、先日までただの少女だった主人公を戦わせることなくして人類が生き残る術は無いということで、ろくでもない話である。それは大人たちの無能さの現れでもあるのだけど、同時に苦悩も感じ取れてしまうところもあって、自分も年をとったものだと思った。
主人公に押し付けられた運命は、非常に理不尽なものなのだけど、結局、彼女はそれを受け入れてしまう。それは、彼女自身が罪を背負っていて、自らを罰することを望んでいるからだろう。だから彼女は大人を憎悪しながら、一方で母親を許すと言うように、アンビバレンツな感情を大人たちに感じている。それは、ただ泣き喚くだけの少女から脱皮を始めていると言うことでもあるわけで、ビルドゥンクスロマンとしての側面も強くなっているように思うのである。
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