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2008.07.25

『七本腕のジェシカⅡ』読了

51hfsn9fzl__ss500_七本腕のジェシカⅡ』(木村航/MF文庫J)読了。画像が無いのが残念だが、この表紙はエロすぎじゃろ?と反応をしておく。

まず大前提として各キャラクターのモチーフ(動機)を書く。これを頭の片隅に意識していないと、物語が一体どういうことになっているのかさっぱり分からない。さらに、木村航は、読者に分かりやすくキャラクターのモチーフを描いてくれるほど親切な作家ではないので、一読してつまらん!ゴミ!と思った人は、一度このキャラクターは何を考えているのかと言うことを意識して読み直してみると幸せに慣れるかもしれません。責任は持てませんが。

まずエドガー。献身士として、貴族(吸血鬼)に血を捧げる奴隷なんだけど、彼自身はその立場に不満は無い。むしろ、貴族に仕えることそのものは名誉あることである、と言う認識があることを忘れてはならない。そうでないと、彼の葛藤のほとんどが意味不明になる。同様に汎不死社会(永遠の生命を持つ吸血鬼が統治し、有限の寿命を持つ者たちは厳しく淘汰される)の意義についても、そうしなくては生きていてない世界であるとして認めているものの、「他者を切り捨てる」と言う行為そのものにどうしようもない抵抗があり、内心では汎不死社会に対して疑いを抱いている。そのあたりの疑問が、”裁定者”であり”か弱い少女”であるジェシカを前にして噴出してくる、と言うのが彼の葛藤なのね。この葛藤について、ほとんど作中では言及されていないので、エドガーがものすごく優柔不断に見えてしまうのが問題と言えば問題だけど、それくらい読み取れと言うのが作者の姿勢なんでしょうがないかな。

で、次はジェシカ。彼女の葛藤は分かりやすいかな(エドガーに比べれば)。望まずにして裁定者としての役目を押し付けられ、七柱の魔王をその身に宿し、世界を滅ぼすためだけに生きる彼女は絶対の孤独の中にある。彼女は(彼女の妹たちを除いて)あらゆる貴族、人間から憎まれ畏れられる存在なわけで、その人生に彼女は疲れ切っている。孤独の内で彼女が思うことは”死”のみとなっていくのは無理も無い話だ。彼女が緩慢なる死を求めていく過程で、エドガー(彼女を拒否しない、ただの少女として接する)に出会ったことで、彼女はエドガーを失うことの恐怖に苛まれることになるわけだ。

ジェシカを助けたいが、己の義務(と言うか命だな。献身士だし)に縛られているエドガーと、エドガーを助けたいが、己の中の魔王を抑えることしか出来ないジェシカの、双方の葛藤が主軸になっているわけですね。基本的にはボーイミーツガールなストーリーなんですね。あとは汎不死社会という思想が強く根付いているエドガーの迷いはきちんと理解しておく必要があるでしょうね。

ああ、そうそう。忘れてはならないのが、エドガーの主人である女貴族、エルマーですね。彼女はこの地方の領主であるわけで、裁定者たるジェシカとは敵対関係(と言うほど単純なものでもないが)にあるわけで、ある意味、作品上の悪役としての立場にあるわけですね。でも実際にはそんな単純なものじゃないよね。彼女は領主であるからして、彼女の臣民を守る義務があり、絶大な能力を持つ魔王に対抗するためには、手段を選んでいる余裕はない。だまし討ち、人質、エドガーを利用した罠などさまざまな手段をとる。その手腕は外道の一言だけど、決して悪とは言えない。むしろ彼女自身も矢面に立って魔王と戦っているところを見ても、立派な領主であると言えると思う。まあ、彼女の場合、自己の欲求のために戦っているところもないでもないが、と言うか実際に知識欲優先のマッドな人なんだけど、まあ、それぐらいの欲深さがあるほうが人の上に立つ者としてはいいのかも知れんがね。あるいはこの人も、ある意味汎不死社会の異端者なのかもしれない。永遠の命を持ちながら、知識に、世界に飢えている。まるでただの人間のようだ。と言うわけで僕はこの人けっこう好きです。

キャラの話ばかりしてしまったが、世界の成り立ちと言うものが少しずつわかってきたところなので、これで打ち切りにならないといいんだけどなー。もっとこの世界のことを知りたいよ。

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