『傷物語』読了
『傷物語』(西尾維新/講談社BOX)読了。
『化物語』の前日譚に当たる今作だが、暦くんの目的意識とストーリーラインがはっきりとあるため、キャラクターの奇抜さと会話に奉仕していた前作と比較すると、ややノイズが多くなっているような気がする。前回は、ほぼストーリーを語る事をやめて、最低限のストーリーに際限なくキャラクター性を詰め込んだストイックさと、物語がどこに転がっていくか分からないスリリングさがあったのだが、やはりゴールがすでに分かっているためか、そこから逆算してストーリーが規定されてしまっており、個人的にはわりと普通のライトノベルであると思う。
どうも西尾維新は、”物語を語ろうとすると面白くない”と言う印象がある。そもそも、この人はあまり物語そのものには興味が無いのだろうとも思うのだが、つまり、この人の作るストーリーそのものは、基本的に忠実と言うか、忠実すぎる、教科書的過ぎる作劇をしている。ところが、西尾維新はキャラクターを作っているうちに、どんどんキャラクターに感情移入してしまうのか、どんどんキャラがストーリーを逸脱し始めていって、物語は迷走、暴走、逆走を繰り返し、なんだかよくわからないところに到達していくところが僕が好きなところなのだ。逆に言えば、逸脱の無い西尾維新は普通のライトノベル作家とさして変わらない。むしろ物語そのものは陳腐ですらある。『刀物語』が僕にとってつまらなかったのもおそらく同じ理由で、おそらく西尾維新は何らかの縛りがあると(『刀物語』では12ヶ月刊行)、その持ち味を発揮できない作家である、と改めて思うのだった。
まあ、これも面白いんだけどね。前作のユニークさからすると、普通の面白さではあると思う。
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