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2008.05.07

報われない、そして哀しい道化

猫は勘定にいれません『円環少女』評を読んで、このシリーズの主人公について、つれつれと考えた。

結局、仁は、自分が所属する組織における義務だけでなく、師匠や友人、なにより幼馴染の京香姉ちゃんの想いすら裏切るという、本来、良識のある人間としてはやっていけないすべてをやってしまっているんですよね。その点、仁が嫌いだというたけさんの気持ちはよくわかります。組織人として失格ですよね、仁は。その点、僕もちょっと許せないという気持ちもある。

それを理解した上で、組織や社会という不条理に押しつぶされようとしている”理想”を守るために、必死で足掻く仁の姿には、否定できない崇高さがあると思うのです。

仁は夢想家と言うわけでもなく、理想論を本気で信じているわけでもない(と、思うんですが、違うかもしれない…)。ただ、子供が血みどろの戦場で戦い、命を落とすなんてことが耐えられない、ある種、弱い人間なんだと思います。生きるために何かを犠牲にする覚悟が出来ていない。それは確かに欺瞞です。

しかし、割り切れていれば、覚悟していれば、子供を戦わせることが正当化できるのか?といえば、もちろんそれはNOといわざるを得ない。子供が戦わない世界、それは理想です。しかし、現実はそうではない。それでもなお、子供の前でだけは、”世界は正しさに満ちている”と言う絶望的な嘘を演じ続けようと言うのは、哀しい道化の所業でしかないわけです。

しかし、仁は自ら望んで道化を貫こうとしたわけです。自分でも馬鹿なことをしているし、恩人に土をかけるような行為であり、なによりそんな嘘はつきとおせるわけが無いことも知ったうえで。あらゆるしがらみを(かけがえのないそれを!)すべてかなぐり捨ててまで、そんな青臭いと言ってもいい動機で、自らの良心を貫こうとした仁を否定することは、僕には、どうにも出来ないのです。

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コメント

仁は、いつも迷っているけど、でも出す答えはぶれてないんですよね。これで毎回コロコロ答えを変える男だったら、僕も心からdisれたんですが(笑)

そこがあるから、僕も「そりゃわかるけど、しゃあねえけど、でもよお!」みたいな感じです。うーん、上手くいえないなあ。「やりたいことがあるんです」っていって会社を辞める後輩を見ているような感じでしょうか(例えが小さすぎ)。

投稿: たけ | 2008.05.07 23:45

>。「やりたいことがあるんです」っていって会社を辞める後輩を見ているような感じでしょうか(例えが小さすぎ)。

いや、それたぶん的確すぎる例えだと思います(笑)。たけさんの気持ちは、たぶん、京香姉ちゃんの気持ちに近いんじゃないでしょうか(程度の差はあるでしょうが)。

まあ、仁の動機を理解出来るかどうかは、それぞれの解釈次第になってしまうんでしょうね。少なくても、彼の決断は万人が支持出来るものではないでしょうし。

投稿: 吉兆 | 2008.05.08 00:12

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