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2008.05.13

『烙印の紋章 たそがれの星に竜は吠える』読了

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烙印の紋章 たそがれの星に竜は吠える』(杉原智則/電撃文庫)読了。

・『熱砂のレクイエム』が好きだった自分としては、杉原智則がSF大河ロマンを書くという情報だけで購入してしまいました。残念ながら『熱砂のレクイエム』は全二巻で打ち切りの憂き目にあってしまったわけですが、最近の電撃文庫の方向性として、群像劇的なニュアンスを取り入れた作品も売れると味を占めたようで、その意味ではようやく杉原智則の時代がやってきたといえるでしょう。以上、独断と偏見に満ちた電撃文庫編集方針妄想終わり。

・この作家は、本質的には、キャラクター主導(ここでは、キャラを立てるのが上手いかどうか、という意味合い)の作家ではないように僕は思っていて、というか、キャラクターの作り方は平凡とさえ言える。

・それを、この作者は、エピソードの”積み上げ”の丁寧さで補っていると感じる。どういうことかと言うと説明し始めると面倒なので省略するが(気力が続かん)、要するに、キャラクターが背負っている背景の描写が丁寧なので。ビリーナ姫なんて、今回はほとんど活躍しなかったけれど、9才で人質犯と渡り合うというエピソード(まあ、このエピソードの見せ方も、もうちょっとなにかあるだろうと思うんだけど)があるだけで、それほどに果敢な人物であるのかが良く分かる。また、主人公のオルバもまた、己の中にある強烈な負の感情の源泉のエピソードがきちんと描かれているため、その後の周囲すべてを巻き込んで破滅的な野望に突き進む姿に素直に感情移入できる。

・ただ、エピソードそのものの作り方がそれほど上手いわけではないところがちょっと惜しいなと思う(例えば、一介の剣闘士奴隷である主人公が帝国の王子として振舞わなければならなくなったときに、さして苦労もせずに順応し、しかも、大人顔負けの策略を用いていく展開は、事前に読書家であり、また不良グループのリーダーであったというエピソードを積み上げてはいるものの、描写そのものが不足しているために、主人公がどこまで出来るのかがよくわからず、いささか唐突な印象をうけてしまった)。

・ただ、それを差し引いても、わくわくさせられる物語であるし、主人公の黒い欲望が、帝国をどのような方向に導いていくのか、非常にスリリングに思うのだった。

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