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2008.05.02

『帝冠の恋』読了

帝冠の恋』(須賀しのぶ/コバルト文庫)読了。

19世紀、ウィーンにおけるハプスブルク家を舞台にした歴史恋愛小説。バイエルンから嫁いで来た王女、ゾフィーって誰のことかと思ったら、あのフランツ=ヨーゼフ1世の母親のゾフィ皇太后か!…なんか…歴史の隙間を突くようなチョイスだな…。ベルサイユの薔薇とかでは、エリザベートを苛め抜く鬼姑として有名らしいんだけど(昔、漫画で読んだけど、良く覚えていないなあ)、こんなエピソードがあったとは…と、人に歴史ありとはよく言ったものである。

いや、勉強不足で知らなかったんだけど、ゾフィーとナポレオン2世ことフランツ・ヨーゼフ・カールが同じ宮廷にあって、しかもそのロマンスを取りざたされていたのは本当のことらしい。しかも、相手が夭折したとくれば、こりゃもうロマンスのネタ(失礼)にならない方がおかしいか。

夫との不仲、味方のいない宮廷の中、国を立て直そうと理想と野心に燃えるゾフィーに立ちふさがる壁。その孤独が、ハプスブルクの憎悪を一身に浴びたナポレオンの、その息子であるフランツが惹かれあい、時にぶつかり合う。しかし、彼らの愛憎もまた、大きな運命とでも言う流れに押し流されてしまう。

そんな無常観に支配されがちなストーリーの中、やはり須賀しのぶの描く女性は強い。元々、ゾフィーは「ハプスブルク家唯一の『男』」と呼ばれるほどの女傑で、運命を己の手で切り開こうという意思がある。その意思は、若き日々のさまざまな哀しみや怒りを土台に育まれたものなのだろう。

時代は移り、かつてゾフィー自身が有能だが時代遅れの鉄腕宰相メッテルニヒを切り捨てたように、ゾフィー自身も新しい時代に押しやられていく。新しい時代の象徴であるフランツ=ヨーゼフ一世とエリザベート。彼女らによって自分の居場所は失われていく事を知りながら、それでも冷厳なる女帝として振る舞っていく彼女の姿には、単純な格好良さだけではすまない孤独がたたえられていて、染み入る。

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