『薔薇のマリアVIII ただ祈り願え儚きさだめたちよ』読了
『薔薇のマリアVIII.ただ祈り願え儚きさだめたちよ』(十文字青/角川スニーカー文庫)読了。
いやー何なんだろうねこれ。作者は一体、どこからこんなアイディアを思いついたのか、さっぱりわからんぜ。乱暴な言い方をしてしまえば要するに○オチなわけだけど、もちろん、それだけで片付けられる内容じゃないよねえ(ある意味、これもセカイ系とでも言うのか?)。もはや薔薇のマリアシリーズにおいて、もう一人の主人公とでも言いうべきアジアンの内的世界を徹底的に、えぐりこむように描写しまくっている。
えーと、つまり何が言いたいかといいますとね、この一冊で、十文字青は、今まではあくまでも脇役的存在であったアジアンを、主要人物級に、とりわけマリアに匹敵するほどのキャラクターに肉付けをしようとしているわけですよ。マリアはこれまで十巻近くをかけて少しずつ描写されてきたがゆえの人格的厚みが存在しているわけだけど、アジアンはそこまで描写がなかった(と言うより、内心を明かさないキャラクターだった)。このままだと、アジアン編を進めていく上で、マリアに対して対等な立場になれない、と作者は判断したのだろう(と僕は思っているだけなんだけどね)。そこで、作者の凄まじいアクロバットによって、アジアンの始まりから現在に至るまでの葛藤と、マリアに対する想いを、この一冊に超圧縮して描いたわけですな。マリアが十巻近くかけたことを一巻でやっちゃおうと言うのだから、そりゃもー歪つなもんなだけど、その歪さが逆にサスペンスフルな緊張感をもたらしているように思えるんだから、地力のある作家ってすげーなー、と感歎いたしました。
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コメント
コメント失礼します。
本書にはちょっと度肝を抜かれました。このⅧを読むと、なんだかアジアン(黒様)とマリアは似ている気がしてきます。
確かにこのⅧまではアジアンの1人称は少なかったですからね。Ⅴの時も感じましたが十文字青は思い切りが良い作家だと。踏み込みの鋭さと深さが半端ないと思います。
他社での新シリーズも楽しみですね。著者ならば何をテーマに書いたとしてもおもしろくなる予感がするから不思議です。
投稿: isaki. | 2008.03.29 22:16
十文字青の真に凄いところは、徹底的に読者の予想の斜め上の発想をする作家にも関わらず、ちっとも変化球を投げられている気がしないところだと個人的には思うんですよね。
重要人物をあっさり殺したり、フリークスめいたネジの外れたキャラクターをどんどこ登場させながらも、物語としては『超王道』。これって実は凄いことなんじゃないかと思います。
いや、比較するようで申し訳ないんですが、平坂読なんかは典型的な変化球作家(と言うより変化球しか投げない)だと思うんですが、実は十文字青と、表面的にはやっていることはそんなに変わらないと思うんですよ。
例えば、劣等感に満ちた主人公、イカレたキャラクター、主要キャラでも容赦なくぶち殺したりと予想の斜め上の展開などなど。
もちろん、これはどちらが優れているという問題ではないんですが、ここまで過剰な事をやっているのに、その過剰さに切なさや爽やかさすら感じてしまうのは一体どういうことなのかと自分でも不思議です(ちなみに平坂読の場合、その過剰さがあらゆる意味でギャグに昇華されてしまうのは、あれはあれで貴重な才能であると思っています)。
いやーすげえ作家だなあ…と気持ちを新たにいたしました。
投稿: 吉兆 | 2008.03.30 00:45
成る程! ここで平坂読の名前が出てくるとは……。その発想はなかったですね。
綿密に構築した世界観(システム)の中で、キャラクターそれぞれが自由に闊歩する(ように感じる)十文字青と、破天荒なキャラクターの存在と行動こそが作品世界を構築している(気がする)平坂読、この二人の奇才は(自分の中では)限りなく代替不可な存在として認識されていて、いとおしくさえ思えてしまいます。
投稿: isaki. | 2008.03.30 21:48
何をやっても王道になってしまう十文字青と、何をやっても変化球になってしまう平坂読、と言う対比も出来ますか。
正直に言うと、思いつきで書いただけなんですが、予想以上に面白い組み合わせになってしまいました。驚きです。
どちらも、似たような作風が(少なくともライトノベルでは)見当たらないという点で、非常に貴重な存在であると思います。
そういえば、平坂読もついに4巻の壁を越えました。めでたい。もっと売れると良いんだけどな…。
投稿: 吉兆 | 2008.03.31 00:56