『君のための物語』読了
『君のための物語』(水鏡稀人/電撃文庫)読了。
いやーまいったねこれは。物語を愛する人のための物語、というと実に”くさい”のだけど、そういう作品が大好きなんだからしょうがねーよなー。
この作品については、好き、としか言えないので、実に感想を書くのに困っているのが正直なところなのだけど、この作品には、(上手く説明が出来ないのだけど)物語を読んでいていいよな、と思う瞬間はがあるのです。例えば第一章のクライマックスで、”セリュサの世界”が現出するシーンなどがまさにそれ。
彼女の横顔。お茶を楽しむ黒ずくめの青年。飛行船。青い空へ飛行船が浮かび上がる。彼女が手を振る。自分も手を振る。笑顔…。
本当に、この作品を読んでいて良かったなあ、と思う場面だったのだ。
ちょっと無粋なことを書くと、ある意味、黒ずくめの人外の美青年という夢幻魔美也を例に挙げるまでもなく、ある種の典型とさえ言える存在と売れない作家志望でフリーの新聞記者である主人公の、皮肉を言い合ったり友情を培ったりするというのを眺めたいというある種の欲望がたぶん作者にはるとおもうのだけど、そこから始まってここまで美しい物語が描けるとは本当に見事だと思うのだった。
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