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2008.03.30

『鉤爪の収穫』読了

51zmavdxvzl__ss500_鉤爪の収穫』(エリック・ガルシア/ヴィレッジブックス)読了。

エリック・ガルシアの恐竜ハードボイルド第三弾は、またしても女関係でややこしい事態に巻き込まれるヴィンセント・ルビオの受難…と言うにはいささか重過ぎる内容だった。

今までのコメディタッチの物語から一転、ルビオの苦い青春の日々から生じる葛藤が中心になっている。とあるマフィアのボスからの(半ば脅迫の)依頼によって、マイアミでの組織抗争に巻き込まれてしまったルビオは、敵対組織のボスがかつての親友とその妹である事を知る。親友を、そしてその妹であるかつての恋人を陥れることなど出来るはずも無く、しかし、依頼を遂行せねばルビオの命は風前の灯。苦悩しながらも、生来のお人好し気質を発揮させていくうちに、成り行きで2重3重スパイまでこなす羽目になってしまったルビオを明日はどっちだ!?

とまあ、常時苦しい立場に置かれてしまったルビオが、ヘタレ気質全開で右往左往するのが物語の主眼になっている。まあ、相変わらずノリの軽いルビオのキャラクターのおかげで、あっちこっちで嘘をつきまくり、ギャングを陥れたり逆に罠にはめられたりとかなりひどい状況になっているにも関わらず、むしろそのドタバタを愉快になってくるのはさすがだなあ。「さらば愛しの鉤爪」でも相棒を務めた女探偵ブレンダとの掛け合いも相変わらず楽しいし、ルビオの過去が明かされるあたりはシリーズものの醍醐味ですな。

そんな常時軽いノリではあるんだけど、かなり危険が危険で大ピンチな状況であるのは変わらないので、ルビオは常に厳しい選択をせまられ続けている。かつての恋人、親友を助けるのか、しかし、そのためには己の命を賭けなくてはならない…。失敗すれば、残酷なる死、成功してもただではすまない。そんなギリギリの状況の中、ルビオは決死の綱渡りを開始するわけだけど、我らがルビオさんがそんな格好良く決めてくれるはずもなく、ギャングにはボコられ、女には騙され、散々な目に合ってしまうわけですな。

ところがどっこい、ちっぽけなプライドを胸に、逆境に立ち向かって行く主人公を見よ!たとえ最後に、残酷な、あまりにも残酷な真実が明らかになろうとも、彼の反骨は打ち折れることは無いのだ。

ヘタレで、女に弱くて、気も小さい、ついでにハープ中毒な、しかし、誇りを知る男の、極めてハードボイルドな一面が見られる快作であった。

しかし、もう恐竜とか、どうでも良くないか、この話…。

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