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2008.01.27

『人類は衰退しました(2)』読了

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人類は衰退しました(2)』(田中ロミオ/ガガガ文庫)読了。

正直なところ、手放しで褒めちぎりたいのだが、さすがに痛々しい信者発言になってしまうので自重する。

田中ロミオは超サイコー!(自重してねえ)

「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」

つまりこれはあれだ。ニルスの不思議な旅。あとガンバの大冒険。のオマージュ。

あー認識が異なれば世界の見え方が違う、と言う話を、超わかりやすく説明してくれる話でもある。知性と認識をめぐる話、とか。知性とは、世界を認識する領域を示すものである、とか。

つまり、ハムスターサイズになった”私”にとって、樹林の先端は不可知の領域であるように。さらに小さくなってしまった”私”にとって、妖精さんの腰から上は不可知であるように。人間にとってもまた、その知性より不可知の存在がある。世界は決して不変のものと言うわけではなくて、認識によって変わる。というか、世界は不変だけど、人間が認識できる領域には限界があるわけで。

世界をビル構造だとして、人間の認識している領域が、ビルの10~12階ぐらいだとする。それ以外のフロアに移動しようとしても、出来ない。でも、本当は上にも、下にも階層があって、それがどこまでつながっているのか、人間には想像することしか出来ない。世界は20階建て?30階建て?下には?地下もあるの?とか。世界は無限につながっている、と言うことで。きっと、妖精さんとは、きっとビルの10階あたりを共有しているだけで、それより下の階で何をやっているのか、人間には分からない。と言うより認識出来ない(分からないということさえ分からない)。

でも、きっとそこには、そこの世界があるわけで。ハムスターや、虫や、樹木の認識が存在すると。そうすると、上の世界もきっとあって、つまり、”神”とか、そういう存在。ハムスターや、虫に意識があると仮定すれば、きっと神も存在すると言う仮定もありえるわけね。

あー。あと、認識が異なれば世界が変わるということであれば、同じ人間同士でも、異なる世界を見ているんだよねーと言う話でもあるか。お祖父さんと”私”の間では、(世界に対する知識の差があるゆえに)きっと見えている世界が異なっているはず。人間は孤独だー!

まあ、その溝を埋めるために、人間はコミュニケーション、すなわち言葉を発展させてきたわけなんだなー。
 
 
とか思うと面白くね?と言う話。たぶん。
 
 
「妖精さんの、じかんかつようじゅつ」

出来事だけを見ると非常にシンプル。(1)妖精さんはお菓子をいっぱいたべました。(2)助手さんの自分探し。これだけ。

助手さんの自分探しの話。彼は不確定な存在なので(と断言していいのかしら?)、自分を確定してくれる他者の存在を求めていたんだよね。無個性な存在が何を思うのか、といえば個性を得たいという気持ちである、と作中で”私”は言っていたけど、個性を得たいという衝動は、「他者」の存在を認識して初めて得られるものだから(って、これもまた認識の話なのか)、そんなに簡単にはいかんだろう、と思う。他者に興味を持つことからはじめなくっちゃね。

自分を確定してくれる”他者”として、助手さんは”私”を選んだ。なんでよりによって”私”なの?…なーんて確認するのは無粋も極まるってモンだ。助手さんにだって選ぶ権利はある。ワーオ!ラブ臭がするよ!ラブ臭がするよ!

…まあ、本当に”私”でよかったの?と言う気もするけどさ。
 
 
あー。あと『あなたは前よりちょっとだけ、視野が広くなったんですよ』ってところ。これも認識の話。「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」が”縦方向”への視野の広がりがあったとすれば、この「妖精さんの、じかんかつようじゅつ」では、いわば”横方向”への視野がある。つまり、主観と客観の話。

自分自身のことは、自分が一番良く分かっている、なんていう言説こそ戯言であるのは言うまでも無いのだけど。自分を知るためには、自分自身を客観視することが必要であること。あとは、外部との(それこそ認識の異なる個性を持った)存在との”摩擦”によって、自分の形を見定めることが必要、なのかもしんねえなあ。コミュニケーションと言うのは、外部に働きかけるだけじゃなくて、内部にも影響するモンなんだよなー、とかコミュニケーションが苦手な自分が言ってみる。概して、コミュ下手な人間は主観的になりがちだしなー。…うわ、自戒、自戒ですよー。

まあ、それは良いとして。良くないが。
 
 
結局、今回収録されている2編は、どちらも”世界を認識する”と言う行為の、異なる側面、つーか、手法を現しているのだな、と。主人公である”私”は、世界には認識出来る限界が存在し、しかし、限界の向こう側は確かにあるということ。そして、世界を認識する主体である内部を少しだけ理解出来た。そして同時に世界と言う認識を共有する相手を得た…つーか、得られるかもしんない。

コミュ下手で閉鎖的な”私”が、少しずつ視野を広げていく話なんだなあ、と考えると、なんか、その、凄く感動してしまうのだった。

「探し物は、見つかりましたか?」
少年はわずかに頬を染め、小さくうなずきました。

ここには、誰かとコミュニケートする喜びに満ち溢れている。

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