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2007.12.06

『円環少女(6) 太陽がくだけるとき』を読んだ。

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円環少女(6) 太陽がくだけるとき』(長谷敏司/角川スニーカー文庫)読了。

長谷敏司の濃密な文体が生み出す緊張感が凄まじい。前回まででひたすら主人公を(そして読者を)抑圧し続けた展開から、爆発を起こしたかのようなハイテンション。もー全編クライマックスだなこりゃ。世界は理不尽で残酷であるけれども、少しでもより良い世界を小さな少女に見せてあげたいと言う切なる想いを胸に足掻いてきた主人公、仁がとりあえずとの留保付きではあるものの、ついに成果を得ることが出来たということがとにかく感動的だった。その成果と言うのは、ある意味においてもっとも過酷な選択を選び続けた仁の無意味で無謀で無茶な行動によって手に入れたもので、彼が今まで行ってきた選択は無駄では無かったのだなあ。正直なところ、この主人公は何かを得るために何かを失うと言うことに覚悟がもっとも定まっていない人間だと僕は思っていて、つまり、優柔不断でお人良しで判断力皆無のどうしようもない駄目人間なんですよね。作中でもメイゼルを救うために地下の魔法使いたちを殲滅しようと行ったはいいけど、魔法使いたちに感情移入しちゃって後先考えず味方をしちゃったり、メイゼルが敵として現れたら今度はメイゼルと戦うことを拒否して逃げ回ったり、メイゼルがピンチになったら、今度も公館(仁の所属先ね)の魔法使いと戦ったり(つまり裏切り)…。もう、こいつは、何一つ主義主張がねえっ…!あっちにふらふら、こっちにふらふらと、もうどうしようもないヤツだ。一番どうしようもないのが、こいつはそれが分かっててやっているってことだが…。救われねえ。でも…そうやって、すべての人を救おうと足掻きに足掻き、そして当然のように敗北を重ねてきた仁の、初めての勝利の日になったわけですよ。6巻目にしてはじめての。…これまで、戦いに勝ったことと仁の望んだ結末はイコールではなかったからなあ。

もちろんそのカタルシスも素晴らしかったのだけど、相変わらず豪奢にして大伽藍を思わせる文体は健在で、その濃密さを持って、凄まじい勢いで人間の葛藤を描きぬいている。仁もそうだけど、自らの信仰を見出したエレオノールの決着と決別やメイゼルとの感情のやりとりとか、もうどこまで煮詰めているんだか…。なんかもう、文章を読むだけで飲み込まれそうな印象を受けたのも久しぶり。いいものを読ませてもらいました。

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円環少女 6 (6) (角川スニーカー文庫 153-8) 作者: 長谷敏司 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2007/11/01 メディア: 文庫 正直に言って、とんでもない作者もいたもんだなあ・・・というのがまず真っ先に来ます。こんな話を書ける人間が他にもいるんだろうか? 凄まじい... [続きを読む]

受信: 2007.12.07 07:27

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