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2007.11.16

『遠まわりする雛』読了

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遠まわりする雛』(米澤穂信/角川書店)読了。

古典部シリーズの最新作は短編集になっている。けれどこの本における本当の主役は”時間”そのものだ。あるいは主人公たちが共有するなにか。そこには、主人公が持つ探偵としての”知”の力は、実はほとんど役に立たない。彼は目の前の事件を解決することが出来ても、そこに生じた形の無いなにかを捕らえることは出来ないのだ。それは探偵の敗北か?そうかもしれない。知性の限界か?そうかもしれない。ならば感情を称揚せよと?そうではない。ただそれは…”何か”だ。結局、米澤穂信は、”それ”そのものについては何一つ口にしていない。折木奉太郎が千反田えるとかかわり、その好奇心に振り回され、ときに苦く、あるいは甘い”時間”。彼女を持て余し、遠ざけようと小細工を弄し、結果として生まれる”引っ掛かり”。その引っ掛かりを、”時間”が育む。少しずつ。少しずつ。確実に。その過程。その結果。そこに確実にある”何か”…。それでも米澤穂信は描かない。その核心を。その周囲を固く敷き詰めつつ、”何か”を浮かび上がらせる。それは彼女の横顔だ。自分が生まれ、そして死ぬはずの世界を見つめる彼女の横顔。向けられる視線。交わらない視線。そこにはすれ違いがあって。けれども肩を並べることは出来るのかも知れず。だから折木奉太郎は千反田えるを見つめるのだ。

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