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2007.10.29

『薔薇のマリア verⅢ 君在りし日の夢はつかの間に』読了

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薔薇のマリア verⅢ 君在りし日の夢はつかの間に』(十文字青/角川スニーカー文庫)読了。

今回はアジアン編。と言ってもアジアンが物語の中心になることはなく、彼がリーダーを務めるクラン「昼飯時」のメンバーを視点人物として、さまざまな角度からアジアンを描写していこうと言う手法だ。アジアンに対する昼飯時メンバーの時にストレート、時に複雑な感情と、さまざまな事件が生き生きと描かれている。みんな仲が悪いけど信頼し合っていると言う非常に幸福な関係の描写と、みんなの中心にいながらも孤独の内に自らを秘め隠しているアジアンの対比が切なくも哀しい。自分には決して手に入れることの出来ない空間を、一歩引いたところで愛おしげに見守りつつ、決して踏み込まない。アジアンのそんな不器用で悲しい一面が見える一作であります。

…しかし、マリアの前と比べると本当に別人だなアジアン…。

以下各話感想。

「切情編。」
クラン結成話。わりとおなじみなぺティに加えて昼飯時の主要メンバーの顔見せ話か。しかもクラニィって”あの”…。とりあえずダリエロはものすごいツンデレと言うことを理解した。もう内心デレデレなので見てらんない。ご馳走様でした。…チンピラで殺人鬼だけどな。

「事情編。」
クラニィが主人公のハードボイルド小説。もう、”汚れた町をゆく騎士”を地で行っとる…。この世に正義などと言うものが無く、納得できないことばかり起こるのならば、自分自身が納得をいくように行動するクラニィは超ハードボイルド野郎ですな。惚れた。

「有情編。」
友情と愛情のすれ違いをロマンティックでありながらもビターに描いた一品。いや、なんつー…。これは普通の意味で恋愛小説として面白くねえか?しかも、大人の恋愛と言う感じで、お互いに相手の気持ちは分かっているからこそ、核心に迫らないように駆け引きをしていく言葉が実に切ない話だった。切ないのは主にベティのほうだったけど。これは女性が読むとベティに感情移入するんだろうなあ。

「恋情編。」
昼飯時のいろいろなメンバーが登場してアジアンこと黒様やらあじゅりゃんにラブラブでドタバタなコメディ何だけどアジアンがどこにもいない空回りを楽しむ話。異様に個性的なメンバーが登場しつつ、時間が古株メンバーのその後を描写しているあたりがステッキーではあるまいか。知らんわボケ。とにかく登場人物が多いのにやたらとキャラクターが非常に魅力的なのが素晴らしい。ナツコが「姉と男とどっちをとるか、という選択を迫られたら、ナツコは迷わず姉をとる」と一文とか、それまで騒がしくて自己中心的な迷惑娘の印象だったナツコのイメージがガラリと変わるしなあ。

「余情編。」
…………あー。まー。これは、なあ…。これは2巻のあのシーン。決定された結末なんだな。改めて感じる。惜しい人を亡くした。

「純情編。」
verⅢの締めくくりにして、本編4巻につながるシーン。自分を押し殺してクランを守ろうと一人で重荷を抱え込むアジアンに対して、アジアン自身もまたクランの一員であると言うこと、否、アジアンこそがクランそのものであり、クランと言う一つのつながりに身をゆだねても良いのだという結末。張り詰めて、今にも途切れそうだったアジアンがついに許されたのだなあ。とにかくアジアンが愛い奴すぎる。あと昼飯時の人たちって本当にアジアンのこと好きなのな。

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コメント

久しぶりにコメントさせて頂きます。こんばんは。

クラニィという存在がこれほど大きなものになるとは、想像していませんでした。本編でセリフも無かった人物に、ここまで深い物語があるという。薔薇マリ世界は登場人物ひとりひとりの生きざまが積み重なって構築されているんだなと、改めて。
ダリエロといい、ジョーカーといい著者は魅力的なツンデレ男性表現になんと長けているのかと。
これまで太平お気楽な戦闘集団のイメージだったランチタイム、本書で描かれていた“黒様ファンクラブ”な実像にニヤニヤしてしまいました。

投稿: isaki. | 2007.10.31 21:49

黒様ファンクラブ!そう言う解釈のもあるのか。と言うかそのまんまですね。

薔薇のマリアには魅力的な登場人物が多いですけど、けっこう僕はローガンが好きだったりします。まあ感想では書き忘れていたんですが。

ローガンの苦悩そのものに共感することは難しいですが、あの苦悩は、要するにありたい自分とどう頑張ってもそのようになれない苦しみなわけで、その意味ではとても共感を感じます。

この作者の良いところは、かっこいいだけじゃなくて、そういう人間の弱さ、格好悪さ、挫折と言うものに対して、肯定も否定もしない視点が良いと思うのです。むしろ、自分自身と格闘し続けるところに意味がある、とでも言うような。

ようするに大槻ケンヂ的な側面が非常に強いんですが、その上で群像劇、ビルドゥンクスロマンとしても成立させているところなんか、ああすごいなあと感心するしかないですね。

投稿: 吉兆 | 2007.11.01 19:19

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受信: 2007.10.31 21:55

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