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2007.10.20

『ベルベットビースト』読了

02920676
ベルベットビースト』(ジャック・ヨーヴィル/HJ文庫G)読了。

しかし、キム・ニューマンはどんだけオカルトと殺人鬼が好きなんだろうか…。今回は切り裂きジャックと狼男を相手に貴族とダーティーハリー(いや本当だ。嘘じゃない)と霊媒が事件の謎を解くと言うわけの分からん話になっております。霧の都ならぬ帝都アルトドルフで起こる女性ばかりを狙った凄惨な猟奇殺人事件の謎を解く物語と、貴族制打倒を目指す革命集団の活動を背景に、その他、数多くの登場人物たちがそれぞれ勝手に動き回りつつ物語は次から次へその様相を変化させていく。ビーストと呼ばれる殺人鬼を追う主人公たちが見出したその正体とは…。と言う話で、要するにいろいろなオカルト的な要素もひたすらぶち込んでパロディやら小ネタを大量に仕込んだ作品。まあ要するに鋼屋ジンみたいな作風を思い起こしていただければよろしいでしょう(マジでか)(マジです)。

今回主人公となるのはかつて混沌の騎士に弟を奪われ、10年をかけてその探求に費やした筋金入りの勇者、フォン・メクレンベルク男爵。彼が、破天荒な一匹狼刑事…じゃねえ警備兵と、霊媒師、正義感に燃える若き警備兵と共に殺人鬼を追う痛快なエンターテインメントとしても読めるんだけど、もう作者のオカルトと殺人鬼への愛が溢れて、否、溢れすぎて全編を漂う血塗られ、グロテスクな豪華絢爛な暗黒物語が楽しめる。エログロに満ちたストーリーに、そこはキム・ニューマン、虐げられたものたちの愛と哀しみ、革命の熱狂と裏腹の残酷さ、愚かしさ。人間のさまざまな側面を存分に描きぬいた群像劇ともなっている。ラストシーンのやりきれなさも美しく、どこまで行っても人間は愚かで哀しく、愛おしいものと思わせる。混沌に満ちた世界の中で、それでも愛し、憎むのは人間そのもので、それは姿形がどんなに変容していたとしても、すべては人間の心そのものがあらゆる悲劇と、その裏腹の気高きものをも生み出していくのだろう。

ひどく悪趣味で残酷で濃密で、奇妙な気品に満ちた作品だった。

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» 殺人鬼 [怖いyoutube]
スプラッター映画(splatter movie)とは、殺害シーンにおける生々しい描写に特徴のある、映画の様式のひとつである。広義的にはホラー映画と同じとされるが、 [続きを読む]

受信: 2007.10.21 15:10

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