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2007.10.12

『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』読了

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吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』(ジャック・ヨーヴィル/HJ文庫G)読了。

我らが吸血ヒロインたるジュヌヴィエーヴを主人公とした中篇集。いやいや、このジュヌヴィエーヌは金髪ゴスロリ(妄想)のたおやかな令嬢にして淫蕩な娼婦であり勇敢な戦士でもある言う設定からしてもライトノベルヒロインとしても極めてスペックが高いと思うのだがいかがですか?ごめん、ちょっと嘘ついた。吸血鬼と言う原典が持つ淫靡的な要素を持ち合わせつつ、他者への情愛というものを強く持ち続け、はかなき人間との相違に葛藤する。そんな人外ヒロインである彼女が、前作『ドラッケンフェルズ』での事件の後、恋人であるデトレフ・ジーベックなどさまざまな人間と出会い、その愛と欲望、美と醜悪、善と悪に向き合っていく3編の物語が語られていく。また作者の怪奇小説への深い愛情が感じられるガジェットが奔放に用いられており、とても暗く、そして豪華な物語紡がれる。

各話感想。

「流血劇」
恋人であるデトレフ・ジーベックとともに暮らしているジュヌヴィエーヌたちに、かつて打ち倒したはずのドラッケンフェルズの残した”意思”が迫ると言うお話。正体不明の”人間に取り憑くもの”が日常を送る人間を恐怖に陥れると言う設定はホラー小説の王道と言うところなんだけど、さらに『オペラ座の怪人』と『ジキルとハイド』の世界をぶち込んでしまうことで良く分からん化学変化が起きています。ちょっと作者…こんな古典の傑作をB級ホラーで装飾してしまうなんて……素晴らしいじゃないか!!古典をファックしすぎですよ、と言うつっこみがどうでも良くなるぐらいに、作者が好きなように書いているのが良く分かる快作であります。

「永遠の闇の家」
これは不条理劇でありますな。なんの説明もなしに始まる舞台設定に、矛盾する描写、一貫しないストーリー、役割が混乱していく登場人物、確かなものが何一つないまま、ただただ読者は理解不能な状況に翻弄されるしかないと言う話し。最初に意味不明な状況があったとしても、本を投げ出すのをグッとこらえて登場人物を把握することがまず持って肝要か。混乱し、錯綜していく物語が最後にきちんとオチがつくんだけど、これがまたメタメタな話で…。アンタも好きねえ…。ところでこの作品の元ネタがたしかなんかあったんだけど思い出せない…。解説読めばわかると思うんだけど、この本がどこかに行ってしまった…。あれー?

「ユニコーンの角」
これは、一応ジュヌヴィエーヌが主人公ではあるけれども、実質的にはある貴族の家庭における愛憎劇を描いたサスペンスもの。ユニコーンが出てくるあたり、わりとファンタジー的なガジェットも使われているんだけど、これは実質サイコサスペンスだよな…。殺人鬼と化した犯人が全員をみなごろしにする前に吸血鬼が事件を解決すると言うわけですね(つまらん)。ユニコーン狩りにまつわる不吉な伝説の背景にある、からみもつれた人間関係。もうドロドロのぐちゃぐちゃですわ。事件が解決した後も、結局、”犯人”と”被害者”の間にある愛とも憎悪とも友情ともつかない謎めいた関係が垣間見えるだけなのも良くて、不思議な余韻があった。

ああ、面白かったーと言う感じで読み終わったのだが、なんかこれ、『ベルベット・ビースト』よりも時系列は後の話らしいですね。なんで順番が違うんだ…。そうすると、「ユニコーンの角」がジュヌヴィエーヌの最後の物語になってしまうのか…。なんか勿体ない気がするなあ。続きは出たりしないのかしら(『ドラキュラ紀元』はともかく)。

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