『ねくろま。(2)』読了
『ねくろま。(2)』(平坂読/MF文庫J)読了。
いや、これは素晴らしい。もちろん良い意味で(?)。ヒロインを幸せにしたいと願う主人公の動機はまっとうなんだけど、一度失ったものを取り戻そうと言う行為はまさしく神の領域に挑もうと言う行為であり、そこから生まれる問題(能力的なものと倫理的なもの)に意外と言っては失礼なのだけど自覚的に描いていると感じた。平坂読は作家としては割合、倫理感が強くて、誰かを幸福にすることと、そして自分も幸福になろうとすることを常に描いている作家であるのだけど、さまざまな理由(それは大抵の場合、自己の内にあるものなのが平坂読作品の主人公の特徴だと思う)でその幸福が成し遂げられないと言う困難を、共に描いている作家なのだと言うことを、今回、強く感じるのだった(主人公がわりと素直なタイプなのも影響しているのかもしれない。比較的にだけど)。主人公が持つ幸せになろうと言う意思は、決して自己犠牲的なものではなく、自分自身が満たされようと言う行為と直結しているので、非常に健全なものだ。だからこそ、目的そのものは悲劇的な題材であろうとも、作品そのものはお気楽なライトノベルとして成立しているのだと思うのだった。
あーラブコメ要素とかエロスの部分については…ま、このあたりは作者の含羞っつーか、照れ隠し部分でしょうね。この人はあんまり自分の素をさらけ出すことが苦手なタイプで、ハイテンションなギャグとエロでごまかさなくては、真剣は自分のテーマを書けないタイプだと思う。あるいは単に売れ線を狙っているだけかもしれないけど(そうだとすると完璧に失敗しているけれども)。ヤマグチノボルも同じようなタイプだけど、平坂読の方が、よりヒネクレ度合いは大きいよなあ。真剣に行きたいのに恥ずかしくて素直になれない、見たいな。ハイハイ、ツンデレツンデレ。
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