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2007.10.17

『火星の長城 レヴェレーション・スペース(1)』読了

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火星の長城 レヴェレーション・スペース(1)』(アレステア・レナルズ/ハヤカワ文庫SF)読了。

これは、ちょおおもろい、といってもいいのではないでしょうか<なにがどう面白いのかをきちんと説明できなくなっているところに深刻な言語感覚の枯渇化がいかに進行しているかの確かな証左である。気をつけるべし<うるせえなあ。なんかそんな感じしか感想が出てこねーんだよ。などどいきなり自分の別人格と会話を始めてしまったりしたけれどもそれは本題ではない。個人的な感覚だと、アレステア・レナルズといえば重厚長大思弁的ライトSF(???)を書く人であると思っていたのだけど、この短編集については枝葉がばっさりと落とされ、シンプルながらも力強い物語が描かれている。スペースオペラだったり、サスペンスだったり、ロマンスだったりとジャンルは多様なのだけど、それぞれに共通しているものは、基本的にすごく”ベタ”であるという点である。だけど、それは欠点と言うものではまったく無い。語られている物語は非常に単純なものではあるのだけど、どれもレナルズの上品かつ軽やかな語り口の魅力によって、波乱万丈でどきどきわくわくさせられるエンターテインメントとなっているし、未来世界のアイディアや設定など、レナルズの宇宙史を構築する細部の描き方が非常にビジュアル的にも美しく、感動的でさえある。絶賛してしまったが、本当にそれぐらい面白いのだからしょうがない。しょうがないったらしょうがないのだ。
以下各話感想。

「火星の長城」
これはまさに”火星の長城”の視覚的な美しさを堪能する作品であると思う。主人公がやってきたときの青く朽ち果てた”長城”の格好良さはたまらんものがある。映像で見たい。だれかCGとかでやってくれないないかなあ…。あとレナルズの宇宙史において重要な役割を果たす”連接脳派”と呼ばれる人類の異端者(ある種の極地)の存在を分かりやすく説明してくれる話でもあるのが嬉しい。そうか、こういう人たちだったのか…。攻殻機動隊の世界を、さらに群体化を推し進めた人たちなんだなー。あとどうでも良いんですが、ガリアナが女性だってことに全然気がつかなかった…。

「氷河」
「火星の長城」の続き。ここからさらに未訳の長編に続くらしい。クラバインとガリアナが主要キャラクターになるのかー。それはともかく今作は、なんと驚愕のサスペンスミステリ。太陽系を脱出した連接脳派たちがある無人の星に立ち寄ったとき、遥か昔に漂着した宇宙船を発見する。そこでは搭乗員たちが何らかの理由で死に絶えていた…というわけで、誰が何のために殺したのか?と言うミステリなんだけど、最後に明らかになるSFらしい動機が楽しい。やっぱSFミステリというのはこうでないとな。

「エウロパのスパイ」
これはもう本当にタイトルどうりスパイ物。あるスパイが任務を達成するべく都市に潜入するのだけど、さまざまな思惑と裏切りが行きかい、状況がころころとひっくり返る。最後に主人公が陥った状況とは…というビターな味わいであります。

「ウェザー」
なんだこの超ベタベタなラブロマンスは…。連接脳派とウルトラ族と言うある種の対極の人類に属する男女がであって、さまざまな誤解に翻弄されながらも交流を深めていく、と言う読み方をしてしまうと本当にロミオとジュリエットだな…。しかし、そんなロマンスストーリーに、連接脳派エンジン(しかしレナルズのネーミングセンスって、そのまんまだな…)と言うSFガジェットをからめたり、過去の確執と和解を描いているところなど、単なる甘さだけではない感動がある。

「ダイヤモンドの犬」
これはとても面白いなあ。異星人の残した”塔”に挑む幾人の男女の結末を描くわけだけど、”塔”が出す問題に回答していくことで探索を進めていくシーンがなんともグロテスクと言うかなんと言うか…。問題を間違えることは死を意味するというその塔を探索していくために、肉体を機械に置き換え、脳に加速剤を打ち込んでいくと言うのは、なにか形容しがたいおぞましさがあるよなあ。主人公を誘う悪魔的な人物であるローランドの思惑が少しずつ明らかになっていくにつれて、その不条理感にも似たおぞましさは頂点に達する。最悪だ!最悪過ぎるぞこいつ!!なにより最悪なのは、”塔”の不条理さにまったく理由がないところだよなあ…。まあ理由があっては不条理にならんわけだから作品としては一貫しているのだが。ラストシーンのやりきれない感じもまさしくこの作品らしいと思う。あー本当にもう…素晴らしいなあ(変態ですね)。

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