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2007.08.28

『狼と香辛料Ⅴ』読了

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狼と香辛料Ⅴ』(支倉凍砂/電撃文庫)読了。

アニメ化、コミック化も決まっているようでメディアミックス街道まっしぐらなこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。ロレンスとホロの旅にも終わりが見え始めてきたことから生じる漠然とした不安感に対して、その不安に直視せずには済ませられないほどに聡明な二人はその結末までもが用意に予測されてしまうために、だったらもっとも賢明な対応を取る事を選択するものの、ロレンス自身が自らの感情、望みに対して我儘を貫くことを決意するまでの葛藤が中心となって語られている。すでにロレンスは心ならずも波乱万丈な旅を終えて、実に商人としてしたたかに、狡猾になっていて一筋縄ではなく、もうけ話に隠されたさまざまな陰謀さえも直感と観察力でかぎわけ、己の有利になるように利用していくのだが、今回登場してきた女商人エーブと出会うことで、その己の望みに対する醜くも純粋なまでの欲求を感得することによって、ロレンスとホロの間にすでに了解事項とされていた旅の終わりに対して、見苦しいまでに足掻く事を決意すると言う流れが見事だった。ロレンスの葛藤と、そこからの克服、と言うよりも単なる開き直りでしかないのだが、エーブの人生を垣間見せることによって非常に感動的なまでの美しさがあるように思える。エーブの行いは決して褒められたことではないかもしれないし、むしろ往生際が悪いともいえるものなのだけれども、最後に見せたエーブの表情がそれらのすべてを補っている。彼女は自分が愚かな事をしているときちんと分かっている。でも、己の望みをそう容易くは諦めたくないし、そのためにはやらなくてはいけないことなのだ。ロレンスはその表情を見て、己の望みに我儘に生きる事を決めたのだと思う。

それはきっと夢と呼ばれるものなのかもしれない。

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狼と香辛料 5支倉 凍砂 メディアワークス 2007-08by G-Tools 【ホロの故郷ヨイツの手掛かりを求めて、材木と毛皮の町レノスにやってきたロレンス。ところが、レノスでは毛皮が売れないという事態が持ち上がっていて・・・】 「望んでも手に入らないかもしれない。だが、望まな..... [続きを読む]

受信: 2007.09.03 02:13

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